*

タスククエスト ーGTD物語ー

第十九話

 

「GTDだって?なんだい、それ?」
前回から一週間経って…ごほん。もとい。ようやく頭がはっきりしてきたわたしは、シュバルツに聞いた。

シュバルツは、おや?という顔でこちらを見て、「Getting Things Doneの略で、デビッド・アレン氏が考案した方法のことさ。」と答える。「デビッド・アレン氏だって?アーレン城のデービッド王と何か関係あるのか?」わたしは、クイズの答えを見つけたときのように目を輝かせ早口に尋ねると、シュバルツが、お使いを終えた子どもをほめるように言う。「よくぞそこに気がついたね!実は…。」「うんうん、実は…?」わたしは前のめりになる。「知らないのさ。」わたしはベッドから転げ落ちた。

「からかうのはよせ!」わたしは、こぶができていないかと、頭をさすりながら尋ねる。「まあいい、それで、GTDってなんなんだ?」

「僕が説明しましょう。」モッターが、ついと前に出る。「GTDにまつわるテクニックはいろいろとありますが、ポイントはたったの二つです。」モッターは、人差し指と中指を立てた手を前にかざし、皆に見えるようにゆっくりと動かす。そして、中指を折り、「一つは、頭の中にあることをすべて追い出すことです。」と言うと、モナオにちらりと目配せする。

モナオは、了解とばかりにスケッチブックを開き、パラパラとめくると、こちらに向けた。そこには、様々な事柄がびっしりと記入されている。

 

森に食料を取りに行く
薪を拾う
ごはんを作る
小屋にかけた魔法をチェックする
ヴァイスの勉強を見る

 

「これは、わたしたちが先週の週次レビューで書き出したものよ。」モナオが、スケッチブックを指し示すと、モッターが言葉を引き継ぎ説明する。「そうです。このように、頭の中にあること_あれをやらなきゃ、これもやりたいなということ_を、とにかく全て書き出すのです。」そして、人差し指を折り、「もう一つは、レビューをすることです。書き出したあとも、頭の中には源泉のように次々とやることが湧き出てきます。それらを書き留め、さらに、以前に書き留めたことを見直す。これがレビューです。」そこまで話すと、モッターは握り拳をモナオと合わせ、ふぅと一息ついた。

「なるほど。GTDって、そういうものなんだな。ところで、なんでそんなことをするんだい?」やり方はぼんやりと理解したが、目的が分からない。

すると、先ほどから話したくてうずうずしていた様子のヴァイスが、わたしの前に転がりだして_比喩ではなく、本当に転がってきたのだ!_話し始める。「不肖、わたしくめから補足いたします。そもそもGTDとは、ストレスフリーの仕事術なのです。なぜ、ストレスフリーなのかと言うと、頭に頼らないからです。頭で覚えておくというのは、自分で考えているよりもずっと大変なのです。そこから解放されるこの気持ちよさは極上のワインにも勝り、一度味わうと癖になると、かの有名な…」

「ヴァイス。そんなに一気にお話しすると、としさんが混乱するでしょ。」またもやモナオが制すると、「おっと、それは大変失礼をばいたしました。わたくし、普段は岩のように無口なのですが、興が乗ると雛鳥のように饒舌になるのです。」無口にも雛鳥にも見えないおしゃべり熊のヴァイスが、岩のように丸い体をさらに丸めてお辞儀する様はとてもユーモラスだ。

「GTDのやり方と目的は、何となくだけど分かった。それで、いったい何をするんだ?」わたしは、際限なく横道に逸れる前に、話を軌道修正した。

「そう、そこが肝心なのさ!GTDとはあくまで考え方だからね。GTDする事が大事なのではなく、何のためにGTDするのかを見失ってはいけないのだよ!」シュバルツが、我が意を得たり、と得意げな顔をする。話を始めた本人が、話をそらして得意げにするというのは、どういうことなのだろう?しかし、あまりに得意げなので、なぜかわたしが申し訳ない気持ちになって、もう一度質問する。「あのー、お説はごもっともなんですが、今から何をするのかを聞きたいんだけど。」

自分の発言に酔っていたのか、やや遅れてシュバルツが答える。「ああ、そうだね。今目の前にある問題に取り組むことも重要だ。今から何をするかだって?簡単なことさ。これからの冒険の旅の課題を整理するんだよ。GTDを使ってね。」わたしが質問したのに、なぜか幼なじみの彼女に向かってウインクするシュバルツを横目に、わたしはさっさと手帳を広げる。

「それでは、まずは頭の中にあることを全て書き出してください。」モッターがメガネを光らせて言った。

ううむ、全部か…。とりあえず、思いつくところから、どんどん書いていくか。

 

タスクカフェに行く
タスク管理マスターにアドバイスしてもらう
伝説のタスク管理ツールを探す
失われたタスク管理の書を探す
人々の暮らしを改善する
魔王を倒す

 

こんなところかな、ペンを置こうとしたわたしの頭に、父さんの面影が浮かぶ。わたしのためらいを感じたのか、幼なじみの彼女が「とし、どうしたの?」と尋ねた。

「いや、何でもないんだ。」父さんの事は個人的な問題だ。ここで話す必要はないだろう。

しかし、彼女はずいと詰め寄り、「とし、モッターの話を聞いてなかったの?頭の中のことを全部書き出すのよ。頭の中でぐるぐる考えていると、その考えに思考が捕らわれてしまうの。そうなると、他のこともうまく考えられないのよ。だから、ちゃんとここに書きなさい。」とまくし立てると、力強く手帳を指さした。

わたしは納得半分諦め半分に、「ああ、分かった。そこまで言うなら書くよ。」とペンを走らせる。

 

父さんを探す

 

「やっぱりね。あなたがお父さんのことをいつも気にしているのは感じていたわ。仲間なんだから、変な遠慮しないで素直に頼りなさい。一緒に探しましょう。」彼女は胸を反らせて握り拳で胸をどんと叩き、わたしの肩に手を置いた。

「ああ、ありがとう。」と言いかけたその時、激しい揺れが襲い、わたしは壁に倒れかかった。壁に捕まりながら見回すと、皆壁により掛かっている。床に転がっているヴァイスを除いて…。

「なんだ!?地震か?」わたしが叫ぶと、「この辺りで地震なんて起きたことないわ。」とモナオが答える。「左様でございます。わたくしの記憶が確かなら、この辺りは非常に堅い岩盤地帯で、近くに火山もございません。そもそも地震とは、地面の下にあるプレートが…」「ヴァイス!地震の講釈はいいから、火を消してきてくれ!」モッターがヴァイスに指示を出し、窓から外をのぞき込んだ。「なんだあいつは!?」

モッターの言葉に反応して、皆一斉に窓に駆け寄る。モッターの長身の影からのぞく森の中に、真っ黒な鎧で全身を固めた男が立っていた。

 

解説

 

第十九話を読んでくださって、ありがとうございます。

さて、今回の目玉はGTDです。文中でも語られているように、GTDは頭の中にあることを追い出すことがポイントです。わたしたちの頭の中は、日常の些細なことから、未来の大きなことまで、雑多な考えが渦巻いています。これらは、普段意識していなくても、知らず知らず頭のパワーを消費しています。
すべてを書き出して解放される気持ち良さは、「スゲー爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~」と東方仗助が言ってたとか言ってないとか。はい、言ってません。
というわけで、難しいことは考えず、まずは書き出して頭を解放してみませんか?

今回のストーリーを書くに当たって、堀さん(@mehori)のこちら↓の記事を参考にしました。堀さん、すばらしい記事をありがとうございます!

デビッド・アレンさん自身による、2分でわかるGTDの最初の一歩 | Lifehacking.jp

 

 

読者コーナー

 

今回も読者コーナーのお時間がやってきました。
今回は、第十八話へのコメントを掲載します。

今回コメントをくださった方々はこちらです!
(掲載は、時間が早い順番です。)

 

ひろきさん、お出かけ前に読んでくださってありがとうございます!新しい登場人物たちは、わたしも気になっています。今後の活躍をご期待ください。

 

さちさん、ありがとうございます!今回は、たくさんの新キャラが楽しくて、ノリノリで書いてました。楽しんでいただければ幸いです。

 

真波さん、早速読んでくださって、ありがとうございます!今回のお話にぴったりだったので、お友達のふじも夫妻をモデルにさせていただきました。いいなあ、と言っていただけると嬉しいですね。機会があれば、真波さんにも登場願うかも?

 

ひろきさん、ありがとうございます!外国物は、児童文学が好きです。はてしない物語、指輪物語、ライラの冒険などなど。そう言ったお話の中に出てくる、比喩を使った洒落た言い回しは大好きです。熊のヴァイス氏はわたしのそういう一面が現れたキャラですね。

 

じーにーさん、ありがとうございます!新キャラ続々登場で、わたしも書いていてウキウキです。いろんなキャラの活躍を楽しんでいただければ幸いです。

 

マーさん、ありがとうございます!現代編もいいですが、やはりタスククエストなので、冒険編がメインなのです。これからの冒険にご期待ください。

 

みなさん、今回も素敵なコメントをありがとうございました。

というわけで、今回の読者コーナーは、これにて終了します。

 

ご挨拶

 

いつも応援してくださるあなたに、心より感謝します。

また、こんないい方法もあるよ、というご意見がありましたら、わたし(@toshi586014)宛にお知らせください。
もちろん、ストーリーに関するご感想も大歓迎です。

それでは、次回またお会いできることを、楽しみにしています。

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

【前回のお話】

 

タスククエスト ー熊さんに出会ったー | はれときどきくもりZ

 

【タスククエストまとめはこちらです】

 

タスククエストとは?

このブログで連載中のタスク管理を題材にした小説です。ストーリーを楽しみながらタスク管理を身につけられるおもため話し(おもしろくてためになる話し)を目指します。興味をお持ちのあなた、ぜひこちら↓のタスククエストまとめをご覧ください。
また、書籍、記事の執筆等のご依頼があれば、積極的に受けさせていただきます。ぜひお声かけください。

メールアドレス→toshi586014あっとme.com(あっとを@に変換してください)
Twitter→@toshi586014

タスククエストまとめ | はれときどきくもりZ

 

【関連する記事】

 

タスククエスト ー会議の行方ー | はれときどきくもりZ

タスククエスト ー事例は突然にー | はれときどきくもりZ

Posted from するぷろ for iPhone.

本を出版しました!

あずきちゃんバナー728px

『いいね!』するとFacebookで更新をチェックできます

track feed
はれときどきくもりZ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

タスククエスト外伝~Kをめぐる物語~【創作の本棚】

  タスククエスト外伝~Kをめぐる物語~  ...

記事を読む

no image

Lisgoを12倍楽しくする方法。わたしのオススメする使い方を紹介します。

小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。  ...

記事を読む

no image

2013年のクレドと目標とわたし #2013credo

アイコンがいつまでも新年気分の小説家志望ブロガーとし(@toshi58...

記事を読む

no image

わたしの2012年総合ランキング

小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。 ついに20...

記事を読む

no image

第二領域を徹底分析して夢に向かえ!aTimeLogger2で時間管理しよう。(実践編)

小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。 前回のあら...

記事を読む

新着記事

とあるアプリ開発者の憂鬱。今日はいい天気だから、たまには弱音を吐いてみよう。

弱い音と書いてよわねと読む。それはどんな音だろう? 先日リリースした...

記事を読む

あなたのiPhoneで、不思議な世界をのぞいてみませんか? タップだけの簡単操作で遊べるキュートでポップなアクションゲーム『こぱんたっぷAR』をリリースしました。

祝! こぱんたっぷARリリース! こちらの記事で告知したよう...

記事を読む

ARKitをつかったARゲームアプリ『こぱんたっぷAR』を9月20日にiOS11と同時リリースします。

こぱんたっぷARカテゴリ: ゲーム, アクション, エンターテイン...

記事を読む

それはまるで宝物のように

フリー写真素材ぱくたそ 振り向けば輝いていたあの日 ...

記事を読む

no image

この2時間≠あの2時間?

耳鼻科に並ぶよいつまでも ここ何年か、耳鼻科にいくことが増えた。という...

記事を読む

コメント/トラックバック (3件)

トラックバック用URL:

コメントフィード

  1. […] タスククエスト ーGTD物語ー toshi586014.net/2012/10/13/tas… […]

  2. […] タスククエスト ーGTD物語ー | はれときどきくもりZ […]

  3. […] タスククエスト ーGTD物語ー | はれときどきくもりZ […]




管理人にのみ公開されます

とあるアプリ開発者の憂鬱。今日はいい天気だから、たまには弱音を吐いてみよう。

弱い音と書いてよわねと読む。それはどんな音だろう? 先日リリースした...

あなたのiPhoneで、不思議な世界をのぞいてみませんか? タップだけの簡単操作で遊べるキュートでポップなアクションゲーム『こぱんたっぷAR』をリリースしました。

祝! こぱんたっぷARリリース! こちらの記事で告知したよう...

ARKitをつかったARゲームアプリ『こぱんたっぷAR』を9月20日にiOS11と同時リリースします。

こぱんたっぷARカテゴリ: ゲーム, アクション, エンターテイン...

それはまるで宝物のように

フリー写真素材ぱくたそ 振り向けば輝いていたあの日 ...

no image
この2時間≠あの2時間?

耳鼻科に並ぶよいつまでも ここ何年か、耳鼻科にいくことが増えた。という...

→もっと見る

PAGE TOP ↑