兄とカエルの呪い【エッセイ】

小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。

 

エッセイは自分史?

 

エッセイを書いていてひとつ気がついたことがあります。

それは、エッセイは自分史だということです。

こちらの記事で紹介したように、わたしはちょうど自分史作りに取り組んでいました。そんなタイミングでエッセイを書くきっかけが舞い込んできたということに、運命のようなものを感じずにはいられません。

人生とはなんて不思議で素晴らしいのでしょうか。

それでは、今回もそんなわたしの人生の一端を綴ります。

ほぼ、わたしの思考の垂れ流しですが、楽しんでいただければ幸いです。

 

兄とカエルの呪い

 

今回は、わたしの兄とカエルの呪いについてお話しします。

カエルの呪いというと物騒ですが、そんな恐ろしい話ではないので、お気軽におつきあいください。あ、もちろん、カエルがゆっくり動いて『カエルのノロい』とかいうオチでもありません。ご安心を。

さて、『父の怪談体験』では父の故郷が舞台でしたが、今回は母の故郷が舞台です。

母の故郷は、父の故郷と同じくらいの田舎町です。家の周りには、田んぼや畑が広がっています。二車線の国道以外は信号も車線もないような道ばかり、そんな場所でした。

夏休みやお正月になると、家族で母の故郷に里帰りします。わたしは、寡黙で真面目な祖父や、いつも笑顔で優しい祖母が大好きでした。また、田んぼの周りや小川で遊ぶのが大好きでした。

そんな楽しい里帰りのある日のことです。あれは確か、わたしが幼稚園に入る頃の出来事でした。

わたしは、いつものように遊びに出かけていました。その日はカエルを捕まえようと、バケツを持って家を出ます。そして、カエルがいそうなところを見つけては、走り寄って覗きこみ、カエルを探しました。

そんなこんなでカエルを十匹ほど捕まえた頃でしょうか。わたしはバケツを手に、ウキウキと家に帰りました。

すると、家の前に兄がいました。わたしはお兄ちゃん子だったので、喜び勇んでバケツを兄に向かって差し出しました。きっと、そんなにたくさんカエルを捕まえるなんてすごいやん!と言ってほしかったのでしょう。

すると、兄は予想もしなかった言葉を口にします。

「としくん、こんなにカエルを捕まえたらあかんで。カエルに呪われてしまう!」

わたしは呆然としました。え?呪われてしまう?呪われてしまう?と。

「そんなんいやや!お兄ちゃん、どうしたらいいの?カエル逃がしたらいいんかな?」

わたしは半泣き__いや、もしかしたら泣いてたかもしれません__で兄にすがりつきました。すると、兄がとっておきの秘密を打ち明けるようにこう言います。

「いや、それやったらあかん。あんな、カエルに呪われんようにするには、カエルを百匹捕まえなあかんねや」

わたしは安堵すると同時に驚きました。呪われない方法があるのかと安堵し、百匹も捕まえないとダメなのかと驚いたのです。

しかし、わたしには選択肢はありません。呪われないためには、カエルを百匹捕まえるしかないのです。早速、バケツを手にひっつかむと、脱兎のごとくカエル目指して駆け出しました。

田んぼがあれば駆け寄り、小川があれば目を皿のようにし、溜め池があれば顔を水につけんばかりの勢いで、わたしはカエルを探します。さながら、カエルハンターです。もし、カエル捕り選手権があれば、きっと優勝できたことでしょう。

必死にカエルを求めながらも、わたしの頭にはたった一つのことがぐるぐると巡っています。カエルに呪われる。カエルに呪われる。と。

どのくらいの時間が経ったのでしょうか。

わたしはカエルがたくさん入ったバケツを持って、つかれた体に鞭打ちながら家へと向かいました。家にたどり着くと、兄がいました。その姿はまるで、お白洲の遠山の金さんのように見えます。わたしはさながら、無罪を主張する哀れな町人のように兄に尋ねます。

「これで大丈夫かな?カエルに呪われないかな?」

そのバケツを見るなり兄はもろ肌を脱ぎ、背中の桜吹雪を鮮やかにひるがえします。そして……

ごめんなさい!

さんざん話を引っ張ってきましたが、実はこの先の記憶がありません。あっ、待って!ブラウザをそっと閉じないで!もう一度、記憶をたどってみますから!

うーん、やっぱり思い出せません。

だいたい、カエルを捕まえたら呪われるのに、呪いを解くためにさらにカエルを捕まえるって、矛盾してますよね。そんなことしたら、百倍呪われそうです。

それに、呪われるとしか言われていないんですよね。どんな風に呪われるかもわからないのに、とにかく怖がっています。われながら単純なものです。

まあ、いろいろおかしな話しですが、子ども心にはさぞかし怖かったのでしょう。なにしろ、怖かった時の記憶は残っていて、安心した記憶がないくらいですから。

でも、当時の自分には怒られそうですが、わが兄ながら面白いこと言うなあと思います。さしずめ、言葉ひとつで人を命がけにする、言葉の魔法使いですね。

そんな魔法使いの兄には、それ以降もたびたび騙され、イヤイヤ、楽しませてもらいました。パッと思いつくだけでも『落とし穴事件簿』や『消えたお札の謎』や『吸血タコの秘密』というように、いくつもあります。

でもそれは別のお話。

それにしても、あの時の兄はなんと言ったんでしょうね?

「としくんは単純やなあ。そんなんウソに決まってるやん」と言ったのでしょうか?

それとも、「ふふふふ、それだけのカエルがいれば、我が封印も解けるというものだ。としよ、見事に騙されおって」と言って、そこから封印を解いた兄魔王との果てしない戦いがはじまったのでしょうか?

明るく元気で男らしくて、そしてちょっとイタズラ好きな兄のことです。きっと、楽しい答えを用意してくれていたのだと思います。そう、わたしが思い出せないことを後悔して、あの日にカエル(帰る)と言いたくなるくらいの。

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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