神様がくれた謎(シチュエーションお題SS)【創作の本棚】

この記事の終わりに、あなたにひとつお願いがあります。

その前に、まずは今からはじまる物語をご覧ください。できるだけ想像力と創造力を膨らませて。

 

神様がくれた謎

 

「ねえ、なぜ神様は世界をこんなに複雑にしたんだと思う?」

 彼女はいつも唐突に不思議な質問をする。

「さあね。細かいところまで設定を作るのがめんどくさかったんじゃないの?」

 彼はゲーム好きらしい回答をした。そして、「それに、ほら」と有名な街づくりゲームの名前をあげて話を続ける。

「あのゲームだって最初はきれいに区画わけして理想的な街を作ろうとするだろ。でも、たいてい途中で飽きちまうんだよ。それでテキトーに道路とかを作るとひどい目に会うんだ」

 彼女は目をクリッとして尋ねる。

「ひどい目って?」

「例えば火事がおきるだろ。でも、道がヘンだから消防車が入れないんだ。ボーボー燃えてるのによ、どうしようもないんだぜ」

 彼が肩をすくめてそう言うと、彼女は眉根を寄せてつぶやく。

「それはひどいね」

「ああ、ひどい」

 二人はそう言うとしばらく黙った。彼は街のつくりのひどさを、彼女は火事でなすすべもなく燃えるひどさを、それぞれ想像しているのだろうか。

「で? なんでカミサマはこの世界を複雑にしたんだ?」

 街のつくりを考えるのに飽きたのか、彼は彼女の最初の質問に話を戻した。彼女は一瞬なんのことかわからないような感じでぽかんとしていたが、すぐに思い出して話しはじめる。

「そうね、もしかしたら神様が飽きちゃったのかもしれないわね。でも、わたしはこう思うの。ヒトが人生を楽しめるように、ワザと複雑にしてるんじゃないかって」

 彼は怪訝な顔をする。

「楽しめるだって? 苦しめるの間違いじゃないのか?」

「そういう側面もあるかもね」

 彼は苦い顔をする。どうやら、あまり触れたくない話題のようだ。

「でもね、想像してみて。この世の中に謎が全くなかったら。すべての出来事が理路整然としていて、ヒトの想像の入り込む余地がひとかけらもなかったら」

 彼は吐き捨てるように言う。

「いいじゃねーか。悩み事がなくてよ」

 彼女はさみしそうな顔で彼を見て、静かに首を振る。

「じゃあヒトは、百年近い年月をどうやって生きていくの? 何も考えずに生きるには、百年は長すぎるわ」

 彼は自分の鍛え上げられた体を眺めながら、自嘲気味に答える。

「体を鍛えりゃいいじゃねーか」

 そして、その体格には似合わない、消えいるような声でつぶやく。

「この世界の謎を解くには、百年は短すぎるんだよ」

 彼女は彼の言葉を受け止め、丁寧に心の中へと取り込んだ。そして、深い愛情とほんの少しの悲しみでくるんで、新しく言葉を紡ぎ出す。

「そうね。百年は短すぎるわ。わたしの知りたいことは多すぎて、百年では足りないと思うの」

 彼女はそっと息をつく。その吐息の温かさは、雪道の果てにあるロッジの暖炉のようだ。かと思うと、彼女は爆ぜる薪のように言葉を出した。

「でもね、わたしはようやく気がついたの。わたしの人生は、すべての謎を解くためにあるのではないことに」

「じゃあ、何のためなんだよ?」

 彼が斜に構えた口調で尋ねる。しかし、先ほどまでの冷めた口調とは違い、熱を帯びている。まるで、彼女の吐息の熱が燃え移ったかのように。

「謎を増やすためよ」

 彼は呆れた顔をする。明らかに彼女の発言を小馬鹿にしている様子だ。彼女はそんな彼の態度を意に介さず話を続ける。

「この世界は謎をひとつ解くと、ご褒美に新しい謎をたくさんくれるのよ。そのおかげで、ヒトは百年もの長い人生を退屈することなく生きていける。だから、わたしがひとつ謎を解けば、その何倍も人生が豊かになるのよ。どう? 素晴らしいことだと思わない?」

 彼はその言葉を受け止めかねている。理解できないというよりは、理解できるけど納得したくないという気持ちだ。しかし、ふっと肩の力を抜き、静かにつぶやく。

「ああ、それは素晴らしいことだな。おれがもっと昔からそのことに気づいていればあるいは……。いや、せめてカミサマとやらがそのことだけでも教えてくれりゃよかったんだよ」

 彼は遠いところへと思いを馳せている。

「いいえ。きっとこの認識も新しい謎のひとつなのよ。わたしとキミがそのことに気がついた。だから、わたしたちには素敵なご褒美が待っているわよ」

 彼女がすべてを包み込むような笑顔で言うと、彼は笑った。それは先ほどまでの自嘲気味な苦笑いではなく、あらゆるものを受け入れたような、そして少し照れくさそうな笑顔だった。

 

あなたへのお願い

 

『神様がくれた謎』楽しんでいただけましたか?

それでは、冒頭でお知らせした、あなたへのお願いを申し上げます。

どうかあなたが紡ぐ物語をわたしに聞かせてください。

具体的には、『神様がくれた謎』に、あなたが想像(創造)したシチュエーションを足してほしいのです。

例えばこの物語を読みながら、あなたはこんなことを考えませんでしたか?

『神様がくれた謎』は、いつ、どこで、どのような状況の物語なのだろうか? と。

そしてあなたの頭にはその光景が浮かんだのではないでしょうか。

それは、夕陽の射し込む放課後の体育館でしょうか? それとも、雪にきらめく富士山を眺めながら乗る観覧車でしょうか? それとも遠く離れた地球を眺める宇宙船の小さな小さな窓でしょうか?

また、『彼』と『彼女』はどのような人物でどのような関係なのだろうか? とも。

年齢は? 外見は? 性格は? 性別は? 

恋人同士? 親子? それともたまたまその場に居合わせただけ?

あなたの心の赴くままに自由に考えたシチュエーションを教えてください。

内容や発表の形式は自由です。

Twitterでポンとつぶやいたり、絵を描いたり、物語にしたり。どんな内容でも大歓迎です。

発表するときは、TwitterやFacebookに投稿したり、ブログに記事として公開したり、メールでわたしに送ったり。どんな形でも構いません。

できるだけ検索しますが、見落とすこともあるかもしれませんので、わたし宛(@toshi586014)にご一報くださると助かります。

それでは、『神様がくれた謎』(シチュエーションお題SS)へのご応募をお待ちしております。

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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とし
主夫で育児メンで小説家でアプリ開発者でアプリ開発講師でアプリ開発本執筆中でLINEスタンプ作者でブロガーのとしです。 このブログは、タイトル通り晴れた日も曇った日も人生を充実させるちょっとした楽しさを取り上げます。それが少しでも誰かのお役に立つ日がくれば幸いです。

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