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律子(冬の恋は静かに燃える――チェックリスト――)『僕らのタスク管理ストーリー ~あの季節を忘れない~』【創作の本棚】


――前説という名のあらすじ?――

律子「こんにちは、律子です。『創作の本棚』へようこそおいでくださいました」

智恵子「ちえでーす。今回は僕タス冬編の第四話だよ! もう第三話まで読んでくれた? まさか見逃したなんてことはないだろうけど、そんな困ったちゃんはここから前のお話を読んでね」

律子「早くつづきを読みたいあなたはここから本編に飛んでくださいね

智恵子「りっちゃんたら、意外に積極的なのね。あんなとこで六郎くんに抱きついたりして」

律子「(赤面)いっ、いつもってわけじゃないのよ! あのときはいろんなことを考えてて、気持ちがたかぶってたの。だからつい……」

智恵子「ふふふ。でも、そういうりっちゃんもかわいくていーなー」

律子「そ、そうかな?」

智恵子「そーよー。この先もっと見られるのかな? 『恋するオトメ律子』を(わくわく)」

律子「もうっ、ちえちゃんたら。しーらない。さっ、それでは楽しい稽古がはじまりますよ」

 

本編――チェックリスト――

 

──チェックリスト──

「さてさて、チェックリストについてだったね」

 ティーポットから金色の液体がカップに流れ落ちるのを慎重に見届けると、辰子さんがいつものようにちゃきちゃきと言った。

 あいかわらずスッキリしたリビングは、物が少ないからか、背の高い家具がないからか、開放感がある。そこへ紅茶の香りが広がり、とてもくつろいだ気持ちになった。

「さあ、冷めないうちに飲んでおくれよ」

 二人がけのソファーに座ったわたしとちえちゃんの前のテーブルに、辰子さんが紅茶のカップを並べてくれた。

「いただきます」

 透明感のある白い陶器のカップに手を伸ばす。カップを持ち上げると、金色の水面が揺れて光を反射した。その光にのって紅茶の香りがやさしく運ばれてくる。わたしは身体の奥まで香りを吸い込み、カップに口をつける。カップのふちから紅茶がつるりと口のなかに流れこむと、先ほどの香りと混ざりあって身体と心をやわらかくほぐしてくれる。

まるで辰子さんみたい。自ら光を放ち、香りと味でまわりの人をなごませてくれる。わたしにはないモノを持っている、わたしの憧れのヒト。

「──つまり、チェックリストはチェックするためのリストなんだよ」

 あっ、いけない。せっかく辰子さんが教えてくれてるんだから、ちゃんと聞かなきゃ。

「辰子さんは、タスク管理のことをどうやって学んだんですか?」

 ちえちゃんが無邪気な顔で尋ねると、辰子さんの表情が一瞬曇った。そして、六郎くんがあわてた様子で「辰姉はいろんなとこで知ったんだよ。な?」とお茶を濁すように言う。どうしたんだろ? と不思議に思っていると、辰子さんが静かにつぶやいた。

「教えてもらったんだ。えーと、元カレってやつに」

 そして辰子さんは笑顔になり、アタシにもそういう浮いた話のひとつやふたつくらいあるもんだよ、と大きな声で笑う。

「辰子さん、モテそうですもんねー」

 とちえちゃんが言うと、辰子さんが胸をはる。

「そりゃあアタシはモテモテさね」

「同性から【だけ】ね」

「なんだと、こいつめ!」

 六郎くんの素早いツッコミと辰子さんの返しで場が一気になごんだ。ふふふ、ふたりは本当に仲良しでいいな。でも──なんだろう? ふたりとも少しぎこちない気がする。

「いつまでも本題に入れないじゃないか。いいかい、チェックリストはとっても便利だから、よーく覚えとくんだよ」

「「はーい♡」」

 わたしとちえちゃんが同時に返事をすると、辰子さんがにっこり笑って話をつづける。

「ところで、なんのためにチェックリストを使うかわかるかい?」

 辰子さんはそう言うと、わたしたちの顔をゆっくりと見回す。学校で先生に当てられるときのような緊張感が走り、空気が張りつめた。わたしの頭も素早く回転をはじめる。

「じゃあ、まずは六郎。あんたからだよ」

「えっ!? 僕はもう知ってるからいいよ」

「ほう! それならなおさらいいじゃないか。ホラ、律子ちゃんと智恵子ちゃんにわかりやすーく教えてあげるんだよ」

 辰子さんはそう言ってにやにやしながら六郎くんを眺めている。これがゆがんだ愛情表現ってやつなのかしら? こういうやり取りを見ると、わたしには越えられない壁を実感する。きっとこのふたりは、深い愛情で結ばれているのだろう。それは、わたしが六郎くんを想うのとは全く違う愛のカタチ。

 ないものねだりだってことはわかってる。でも……、ちょっとうらやましいな。

 六郎くんはわたしとちえちゃんの顔をかわるがわる見ると、軽くせきばらいをして口を開いた。

「えーと、チェックリストをなんのために使うかと言うと、大きく三つの理由があるんだ」

 そう言うと、六郎くんは右手の人差し指を立て、自分の顔の前にかざした。

「まずひとつめ。抜け忘れがない。修学旅行のしおりに持ち物リストがあるよね。あれをイメージしたらわかりやすいんだけど、リストを見ながら持って行くものを用意すると、うっかり忘れることがないよね」

 六郎くんが不安そうな顔でわたしたちの顔を見つめるので、わたしは大げさに何度もうなずいて理解できたことをアピールした。その様子を見て、六郎くんはホッと息をつく。そして、右手の中指を立てピースの形にした。

「ふたつめ。分担もしくは引き継ぎができる。これは、えーと……。あ、そうだ。たとえば、弓道部だと試合前の準備がいろいろあるよね?」

 『試合前の準備』という言葉に、わたしの身体が思わず固くなる。その空気を感じたのか、ちえちゃんが六郎くんに目配せしているのが横目に見える。ちえちゃん、優しいなあ。六郎くんはそれに気がついたのか、あっと小さく声をあげて話題を変えようとする。

「えっと、えっと、いまのはナシで。もっといい例えがあったような……」

 そんなふたりの気づかいが嬉しくて、わたしの心と身体がほぐれていく。こわばっていた身体をほぐすようにほぅと一息つくと、笑顔でふたりに話しかける。

「ふたりともやーねー。わたし、いつまでもくよくよしてないわよ。それに、同じ失敗を繰り返さないためにチェックリストを活用するんじゃない。タスク管理は、人生をよりよくするためのものでしょ」

 わたしの言葉を聞いて、六郎くんが安堵の色をうかべた。そして、目を輝かせながらわたしの顔をじっと見る。

「さすが律子ちゃん! そうやって失敗をきっちりと活かそうとする律子ちゃんは、本当にすごいね」

 その笑顔があまりにもまぶしくて、わたしは頭がクラクラした。ああ、六郎くん。いますぐ六郎くんのところへ行ってきゅむってしたい。六郎くんは、わたしの弱いところを笑いとばしてくれる。そんなことはたいしたことじゃないんだよ、と思える。

「はい、そこ。キックオフごっこはいいから、話を進めてね」

 はっ、つい見つめあってたのかしら。やだ、恥ずかしい! 六郎くんは顔を真っ赤にして「なっ、なに言ってんだよ。キックオフってネタが古いよっ」と辰子さんに言っている。そして咳払いをするとこちらに向いた。

「えーと、試合前の準備だったね。弓道だったらたくさん用意するものがあるよね? たとえば──」

「弓、矢、ゆがけ、替えの弦、道着、足袋、胸あて、それから、それから、おやつ!」

 ちえちゃんが六郎くんの言葉をさえぎってひと息に言ったので、わたしは思わず大笑いしてしまった。

「あー、りっちゃん。なんでそんなに笑うのよー」

 ちえちゃんが頬をふくらませてそう言うので、わたしはお腹をおさえて笑いながら答える。

「だって、おやつにすごく力を入れて言うんだもの」

 六郎くんと辰子さんも笑いながらうんうんとうなずく。

「もー、まるでちえが食いしんぼうみたいじゃない。だって、試合したらお腹へるでしょ」

 わたしは笑いを噛み殺しながらちえちゃんの肩をぽんぽんと叩く。

「そうね。『腹が減っては戦はできぬ』だものね」

「そうそう、それよ! ほら、昔の人だってきっとコッソリとおやつを隠し持ってたのよ。ほら、徳川家康なんかお団子好きそうじゃない」

「そうね、徳川家康だって空腹には勝てないわよね」

 くくくと忍び笑いしながら、辰子さんが会話に加わる。

「あなたたち。徳川家康もいいけど、チェックリストのこと忘れてない?」

「「あっ!」」

「ごめんなさい、せっかく辰子さんが教えてくださっているのに」

「えへへ、ついうっかり。ごめんなさい」

 わたしとちえちゃんが口々に謝ると、辰子さんが笑顔で手をひらひらさせながら言う。

「ふふふ、アタシのことはいーのいーの。ただね、律子ちゃんと智恵子ちゃんにとって大切な試合なんでしょ。心残りのないように、自分にできるかぎりのことはやらないとね」

「「はい!」」

 ピシッと背筋を伸ばして返事をすると、辰子さんは目を細めて笑みをたたえる。

「さてさて、分担もしくは引き継ぎができる、だったね。たとえば、さっき智恵子ちゃんが言ってた『弓、矢、ゆがけ、替えの弦、道着、足袋、胸あて』それから──」

 辰子さんがちえちゃんにウインクすると、ちえちゃんが即座に答える。

「それとおやつ!」

「そうね。それらを試合前の準備するものチェックリストとして二枚用意するでしょ。それで、ふたりがそれぞれ一枚ずつ持つの。ひとつは律子ちゃん、もうひとつは智恵子ちゃん。そうすれば、ふたりで同時に準備ができるでしょ」

 あれっ? でもそれだと……。わたしが質問しようとすると、ちえちゃんがはいはーいと手をあげる。

「はい、智恵子ちゃん」

辰子さんが先生みたいな口調で言うと、ちえちゃんが席(じゃなくてソファー)を立って授業中のように質問する。

「でも、ふたりで同じチェックリストを持ってたら、同じものを用意しちゃいませんか?」

「おっ、智恵子ちゃん。いいとこに気がついたね。そうならないために、あらかじめ担当を決めて書いておくといいよ。弓と矢は律子ちゃん、おやつは智恵子ちゃん、てね」

「ああっ、辰子さんまでちえのこと食いしんぼう扱いするー」

「ふふふ。冗談よ、智恵子ちゃん。あとは、スマートフォンを使ってチェックリストを共有するってやり方もあるんだけど、それはまた別の機会で」

 とつぜんわたしの頭に引退式のことが浮かんだ。センパイたちが部を引退して、わたしたちに代をゆずる儀式。そのとき、練習の心得や道具のお手入れなど代々伝わる方法を伝授してくれた。そうか、あれのことか──。

「あっ、そうか! そのチェックリストを後輩にわたせば、試合前の準備のやり方を引き継げるんだ!」

 辰子さんがにっこり笑ってうなずく。

「そのとおり! さすが律子ちゃん。チェックリストを使えば、誰でも同じように準備ができるからね」

「ということは、わたしたちがしっかりとチェックリストを作っておけば、後輩たちが失敗することもないんだ」

 そして、わたしのように悔しい思いをしなくてすむんだ。そのことに気がついたわたしは、胸に暖かいものを感じる。そうか、チェックリストを作るのは自分のためでもあるけど、誰かのためでもあるんだ。タスク管理は人に優しくできるんだ。

「そして最後は『考えなくていい』だね。人に優しくするためには、自分に余裕がないといけないからね」

 辰子さんはわたしの考えを見抜いているかのようにそう言った。わたしは驚いたけど、嬉しくなって静かに答える。

「『衣食足りて礼節を知る』ですね」

「そう、そういうこと! 律子ちゃん、あなたはやっぱり優秀な生徒ね」

 そう言って辰子さんはわたしの頭をなでなでする。この年になると両親にも頭をなでられないので、なんだか気恥ずかしい。でも、不思議な心地よさを感じ、わたしは猫のように目を細めた。

 その直後、頭をなでる辰子さんの手がピタリと止まり、勢いよく振り上げられた。そして、まっすぐに六郎くんの頭に着地する。

「六郎! あんた、律子ちゃんを大切にするんだよ!」

「はっ、ハイ!」

 六郎くんは背中に定規を入れられたかのように背筋を伸ばして返事をした。辰子さんはお日さまをたっぷり吸ったお布団のようにふかふかと笑顔を浮かべると、ゆっくりと六郎くんの頭をなでた。

【次回、律子と六郎のなれそめがついに明らかに

 

――CM――

 

律子「今回も僕タスを読んでくださってありがとうございます。それでは、恒例の宣伝をはじめますね。このCMコーナーは、タスク管理に役立つ情報や、本編に出てきた物を紹介する場です。本編とは無関係なので、読み飛ばしてくださっても大丈夫です。お気軽にご覧ください」

智恵子「りっちゃん、今回は何を紹介するの?」

律子「チェックリストといえば、やっぱりこの本『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』です」

智恵子「自信満々なタイトルねー」

律子「でしょー。でもね、読んだらこのタイトルにも納得なの。詳しくはこちらの記事をご覧ください」

タスククエスト ー事例は突然にー | はれときどきくもりZ

智恵子「りっちゃん、これってもしかして!」

律子「そうよ、ちえちゃん。あの伝説のタスク管理冒険小説『タスククエスト』よ!」

智恵子「作者の人もさりげなく宣伝をいれてくるわねー。まだ休載してるけど、つづきを書かないのかしらね?」

律子「しっ、それを言ったら僕タスが休載になっちゃうでしょ」

智恵子「おっといけない。ちえの青春は、まだまだこれからだからね。やめられちゃあ困るわ」

律子「そうよね。あっ、失礼しました(にっこり)。それではまた、次回にお会いしましょう」

智恵子「まったねー」

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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六郎(夏の恋がはじまる ――目覚め――)『僕らのタスク管理ストーリー ~あの季節を忘れない~』【創作の本棚】 | はれときどきくもりZ

 

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2014/10/23 | タスク管理, 出版, 創作,

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