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鍵っ子探偵ジョー【創作の本棚】

まえがき

創作の本棚へようこそ。

ここでは、わたしが書いた小説を紹介します。

ええ、すでにご用意してますよ。夜空に浮かぶ星たちのようにたくさんあるなかから、とびっきりの本を選びました。今回、あなたに紹介するのは、こちらの一冊です。

『鍵っ子探偵ジョー』

こちらは、ジュブナイルです。おっと、いくらあなたが大人だからって、お帰りにならないでくださいよ。名前だけで判断するのは早計というものです。本も、人もね。

人の魅力を知るのに時間がかかるように、本の魅力を知るのにも時間がかかります。まずは、その忙しく動く手をとめて、ゆっくりとこの一冊を手にとってみてください。

そして、願わくばこの一冊が、あなたのあの日の思い出を呼びさますきっかけとなりますように。

さあ、表紙を開いて、いざ『鍵っ子探偵ジョー』の世界へお進みください。

序章

 てりつける太陽。
 ふりそそぐセミのなきごえ。

 そして、猫みたいな顔をしたおじいさん。

 これからぼくが話すことは、あの夏におきたほんとうのこと。

 そう。忘れられないあの夏──『鍵っ子探偵ジョー』が誕生した夏──のできごと。

◆◇◆◇

 やあ。こんにちは。ぼくのこと知ってるかい?

 え? 知らないの?

 じゃあ自己紹介するね。『ひとに名前をたずねるまえに、自分の名前をいうのがレイギなんだよ』ってママがいってたからね。

 ぼくは、夏目颯太(なつめそうた)。星の海小学校の三年生なんだ。

 えっ? となりにいるちいさい子はだれかって?

 こいつは、ぼくのいもうとの風子(ふうこ)。ホラ、風子。いまいくつ? ありゃ、それだとよっつになっちゃうよ。風子は三歳なんだけど、まだうまくみっつができないんだ。

 えっ? ぼくたちよく似てるねって?

 なにしろぼくたちは『いっしんどうたいしょうじょたい』だからね。あっ、いまのは、ぼくのパパがよく言ってるダジャレなんだ。なんのことかはわからないけど、仲がいいっていみらしいよ。

 えっ? 首からさげてるのはなにかって?

 これはね、おうちの鍵なんだ。あっ、しーっだよ。しーっ。ママに、知らないひとにカギのことは話しちゃダメよっていわれてたんだった。

 うん、そうだよ。ぼくは鍵っ子なんだ。

 パパとママはおしごとにいってるから、ふたりが帰ってくるまで、ぼくと風子でおるすばんしてるんだ。んー、さみしいことはさみしいけど、テレビをたくさんみられるから楽しいよ。だって、ママがいると、あんまりたくさんみられないんだもん。

 そうだ! さいきんハマってるアニメがあるんだけど、しってる?

 あっ、もちろん、宿題もちゃんとやってるよ。だって、宿題しないと、晩ごはんのあとのみかんが食べられないからね。

 あ、そうそう。ハマってるアニメのことだよね。ヒントは、この鍵なんだよ。

 ふふふ、わかんない? ちょっとむずかしかったかなー。そのアニメのなまえはね──

鍵探偵ジョー

「このカギでナゾのとびらをひらいてみよう」

 タイトなスーツを颯爽と着こなした青年は、凛とひびく声でそういうと、胸ポケットからだしたカギを目のまえにかかげた。

「ジョー! 犯人がわかったの?」

 パンツスーツ姿の若い女性が、驚いた声でたずねた。ジョーと呼ばれた青年は、となりに立つ女性のほうを見ると、ゆったりと口を開く。

「ああ、そう言ったんだよ。若菜くん」

 若菜と呼ばれた女性は、信じられないと首をふりながらつぶやく。

「ジョー。長いことあなたの助手しているけど、あなたにはいつも驚かされるわ」

 そのやりとりを眺めていた男が、ジョーに顔を近づけて、恫喝するようにな低い声で言う。

「おいおいおい。オレが犯人だってのかい? いくら名探偵だっていっても、さすがにそれは言いすぎなんじゃないかねぇ。北倉仗助(きたくらじょうすけ)さんよ」

「星野さん、僕のことは、鍵探偵ジョーと呼んでもらおう」

 そう言うとジョーは、手の中にあるカギを高くかかげた。それは、まるで何百年も海のそこに沈んでいたかのような風格をそなえている。はつらつとした若さあふれる彼が、そのカギをとりだすさまは、彼のなかにひそむ老獪さを象徴するかのようだ。

「あなたはさきほど、この家をたずねたことはない。そう言いましたね?」

 ジョーに声をかけられた星野は、すずしい顔でこたえる。

「ああ、たしかにそういったぜ」

「それは不思議ですね」

「なにが不思議だってんだ。北倉、いや、ジョーさんよ。この家の間取りにくわしいのは、持ち主から相談されて図面の設計に携わったからだ。警察に聞いてくれたっていいんだぜ。なにもあやしいところなんてないのさ」

「そのお話しなら、すでになじみの刑事さんからうかがってますよ。図面の設計までしておきながら、いちどもこの家をたずねたこともない。それも知っています」

「だから、いったいなにが言いたいんだ? そんな話、いま関係ねえだろ。設計した家に来ようが来まいが、オレの勝手じゃねえか。それとも、この家に来たことがないから逆にあやしい、なんてヘリクツじゃねえだろうな?」

「そんなことではないんです。そんなあいまいなことでは」

「じゃあ、いったいなんだってんだ!?」

 ジョーのもったいぶった話しかたが気にいらないのか、星野の声にいらだちがふくまれていく。

「あなたが、本当はこの家に来たことがある。そう言っているのですよ、星野さん」

「ハッ、バカバカしい。アリバイだってバッチリあるんだ。なにをいまさら」

 よゆうをみせているが、星野はあきらかにおちつきがなかった。ジョーは、そんな星野をいちべつすると、ゆっくりと部屋を見まわしたあと、瞳のおくにあるキラメキをとばすように、鋭く言った。

「それならなぜ、あなたの指紋があそこにあるんだ!!」

「なっ、なんだって!?」

 星野はおどろきをかくせない顔で、部屋の片隅にすばやく視線をやる。ジョーは、その一瞬のうごきをみのがさなかった。

「あのテーブルの下だ!」

 ジョーの声と同時に、若菜が崖を駆けおりるカモシカのような身のこなしでテーブルの前に移動すると、両手を広げて立ちはだかる。

「これは証拠物件です。これからどなたも手を触れないでください。この場に近づこうとすれば、いかなる理由でも証拠隠滅行為とみなされます」

 星野がいまいましげな顔でジョーをにらんで「ハッタリか」というと、ジョーはケロリとした顔で「ええ、そうですよ」とこたえた。

「なにが鍵探偵ジョーだ。ただのハッタリやろうじゃねえか!」

 星野のことばに、ジョーの眉がぴくりとあがる(これは、彼のクセだ)。そして、その顔には、彼の手にある古めかしい鍵とおなじ、ある種の荘厳さがうかびあがった。

「先ほどの『手』は、たしかにハッタリです。しかし、『ハッタリやろう』と言われるのは心外ですね。ご希望なら、あなたがここに来た証拠を100個ほどお話ししてもよろしいのですよ。でも、それでは退屈でしょう?」

 ジョーはひと呼吸おくと、手のなかの鍵をながめ、つぎに星野に視線をやった。そして、大げさな仕草で肩をすくめて、両手を広げる。

「あれは、ちょっとした演出なんですよ」

「なんの演出だってんだ?」

「人生の、ですよ。あなたがこれから体験する規則正しい人生──何十年とつづく監獄生活──に、ほんのすこしのスパイスをプレゼントしてさしあげたのです。何年かのちに、あなたはきっと、今日のできごとに感謝しますよ。ああ、あのときは、なんと刺激的で退屈のない人生だったのだろう、と」

 そう言うと、ジョーは、鍵をガチャリとまわすような仕草をした。鍵がまわりきると同時に、冷たくて重い牢獄のとびらがしまるような音を、その場にいた全員が感じた。星野は、その重みにつぶされるようにひざまずくと、頭をかきむしりながら泣きはじめた。

「さっ、事件は解決しました。あとは警察にまかせて、われわれは退散するとしましょう。おいしいラーメンが食べたいですね」

 先ほどまでとは正反対のようすで、ジョーはニコニコと歩きはじめた。

 子どものような無邪気さと、熟年の老獪さをあわせもつ。まさに、彼の手のなかにあるカギのような不思議な男。

 それが、あらゆるナゾの扉をひらく男。鍵探偵ジョーなのだ。

颯太、猫じいさんに出会う

 チャランランラーン♪

 おわりのうたがはじまると、プールからあがったときみたいに、ふーっといきをはいた。テレビのなかでおどる、ジョーと若菜をみながら、ぼくはさっき見たばかりのおはなしを思いだしていた。

 あー、今週の『鍵探偵ジョー』もおもしろかったなあ。まさか、星野さんが犯人だったなんて。それに……。

 ピンポーン♪

 あっ、玄関のチャイムがなってる。パパとママはまだ帰ってこないはずだし、いったい誰だろう? ぼくは、マクラをだきかかえながら、すぴすぴ寝息をたてる風子を横目でみると、玄関にむかって走っていった。

 このときは想像もしてなかったんだ。まさか、これがあの事件のきっかけになるなんて。

 このぼく、鍵っ子探偵ジョーこと、夏目颯太がはじめて解決した事件『消えた猫はどこに? 猫じいさんの血と涙』のきっかけになるなんて……。

 つづく

あとがき

鍵っ子探偵ジョー、いかがでしたか?

ご感想は、この記事のコメント欄か、わたしのTwitterアカウント@toshi586014までお願いします。

じつは、このお話は、まだ執筆中です。ボチボチ書いていきますので、つづきを気長にお待ちくださいね。

それでは、またお会いできる日を楽しみにしています。

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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2016/08/07 | 創作

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