六郎(夏の恋がはじまる――デート――)『僕らのタスク管理ストーリー ~あの季節を忘れない~』【創作の本棚】

「こんにちは、律子です。『創作の本棚』へようこそおいでくださいました。『僕タス』こと『僕らのタスク管理ストーリー ~あの季節を忘れない~』も第二話となりました。前回をお読みでないあなたは、こちらからどうぞ」

「まさか読んでないなんてことはないよな!」

「あのー、辰子さん、読者さんが驚いてますよ」

「おっと、またやっちまった。律子ちゃん、前回のあらすじをお願いね」

「はい。それでは、前回のあらすじです。辰子さんの弟の六郎くんは、日曜日の朝に早起きしてお出かけの準備をしていました。というのも、わたしとはじめてのデ、デ、デートだからです。きゃー、恥ずかしい」

「律子ちゃん、ちょっとあなた恥ずかしがってる場合じゃないよ」

「ご、ごめんなさい。えーと、どこまで話したかしら? あ、そうそう、六郎くんが電動カミソリで髭を剃っていたら、顔半分剃ったところで電動カミソリの電池が切れてしまいました。六郎くんのピンチです」

「そのピンチにさっそうと現れて、六郎を救ったのがこのアタシ、辰子さんだよ」

「辰子さん、これ音声放送だから、そのドヤ顏は読者さんに見えませんよ……」

「ちぇっ、せっかくいい顔したのに」

「というわけで、ついに六郎くんとわたしの初デート開幕です♡」

 

六郎(夏の恋がはじまる)

 

――デート――

「六郎くーん!」

律子ちゃんの声が聞こえる。僕は声のする方へと振り返った。僕の目は高性能のレーダーさながら、律子ちゃんの姿を人混みの中から一瞬で見つけた。

人の間を縫って、律子ちゃんがこちらへと走ってくる。ああ、どうしたことだろう? カラスの群れに孔雀がまぎれ込んだような。イヤイヤ、水族館に海の女神がさまよいこんだような。イヤイヤ、なんと言ったらいいのだろう、この気持ちを。とにかく、今日の律子ちゃんはいつも以上に輝いている。

「六郎くん、おはよう! どうしたの? 不思議なものを見るような顔をして?」

「君があまりにも眩しくて……あ! イヤイヤ、なんでもないよ。おはよう、律子ちゃん」

変なことをつぶやきかけた自分をなんとか現実世界へと引き戻して、僕は律子ちゃんにあいさつをした。すると、律子ちゃんが僕の顔をじっと見つめている。ああ、そんなかわいい目で見つめられると……。再び妄想の世界へと旅立ちかけた僕は、律子ちゃんの声で現実へと引き戻された。

「ねえねえ、どうして左だけ赤いの?」

律子ちゃんは、自分の左頬をぷにっと指差して僕に尋ねた。その柔らかそうなほっぺもなんてかわいいんだ!

「ああ、これかい。今朝、電動カミソリの電池が切れてしまったんだ。それで、左だけ安全カミソリで髭を剃ったからさ。辰子のおかげで助かったんだ」

「まあ、辰子さん! 前に六郎くんに見せてもらった写真、とってもかっこ良かったわ。わたしもあんなお姉さんがほしかったなあ」

僕と結婚したら姉になるよ、という言葉を喉の手前ギリギリで飲み込んだ僕は、さりげないそぶりで今思いついた言葉を口にした。

「良かったら今度うちにおいでよ。辰子も律子ちゃんに会いたがってたし。大歓迎だよ」

誘ってる感じがミエミエかと思い、声が上ずってしまった。しかし、律子ちゃんは特に気にする風もなく無邪気な声で答えた。

「そうね。じゃあ、今度お邪魔しようかしら?」

僕はあまりの嬉しさにめまいがした。思わず待ち合わせ場所のオブジェ『黒騎士の像』に寄りかかって額をおさえた。

「まあ! 六郎くん、大丈夫? 体調が悪いなら、今日はお家に帰ったほうがいいわよ」

僕はせっかくのデートが台無しになることを恐れ、素早く立ち上がろうとした。その時、いや待てよ、と一つの考えが頭をよぎった。

「律子ちゃん、せっかくのデートなのにごめんね。ちょっと体調が悪いみたいなんだ。それで……もし良かったらなんだけど……うちまで送ってもらえないかな? 辰子にも会えるし」

「うん、いいよ。そんな様子の六郎くんを一人にできないもの」

イエス、イエス、イエース!

僕は思わずガッツポーズを取りそうになるのをグッとこらえた。外でデートもいいけど、部屋で二人っきりなんて最高じゃないか! しかも、今日は母も辰子も外出するって言ってたから、邪魔も入らない。辰子をダシにしたのは気が引けるけど、この際しょうがない。

「律子ちゃん。じゃあ、よろしくね」

はやる気持ちを抑えつつ、僕はなるべく弱々しい雰囲気をかもしだしながら歩き出した。

次回、家に着いた二人は?

 

――CM――

「今回も読んでくださってありがとうございました。ぺこり」

「おいおい、アタシの出番がないじゃないか!」

「辰子、僕と律子ちゃんのデートなんだから当たり前だろ」

「六郎、何言ってんだい! アタシのいない『僕タス』なんて、クリープのないコーヒー、紅茶のない人生みたいなもんだよ!」

「辰子さん、心配しなくてもこのあとたくさん出番がありますから(たぶん)」

「ちょっと、律子ちゃん。聞こえてるわよ。あなたそんなキャラだったかしら?」

「(ニッコリ)さて、ここで宣伝です。今回のお話で六郎くんが寄りかかった『黒騎士の像』は、タスク管理冒険浪漫小説『タスククエスト』に登場した黒騎士がモデルです。今は休載していますが、二十四話まで読むことができます。興味がおありのあなたは、こちらからご覧ください。黒騎士は第十九話から登場します」

「まったく、作者のヤツ、さっさと続きを書けよなー」

「しっ! 辰子さん、聞こえますよ。あの人気が小さいんですから、そんなこと言うと落ち込んじゃいますよ」

「律子ちゃん……あなた笑顔でひどい事言うわね」

「(ニッコリ)それでは、また次回をお楽しみにお待ちくださいね」

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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