足音【創作の本棚】

小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。

今回は、わたしが書いた小説を掲載します。【創作の本棚】と題して、今後も自分で書いた小説を掲載する予定なので、お楽しみください。

 

足音

 

僕は足音が好きだ。

冬、それも雪がはらはら舞う中、街灯を受けてきらめく雪を眺めながら、白い息を吐き、コツコツと足音を響かせ石畳を歩く。

誰もいない寝静まった町、雪の舞う音だけが聞こえる、そんな世界に僕のリズミカルな足音が響く。心臓の鼓動と足音が同じテンポでダンスしている。

コツコツ、コツコツ、コツコツ…

そんな足音が好きだ。

 

 

わたしは足音が嫌い。

駅の雑踏を抜け、商店街から住宅地にはいる。少しずつ人影が減り、雑多な足音からわたしの足音が抜け出す。合唱コンクールでクラス全員が歌っていたはずが、気がついたら自分一人しか歌っていなかったような、そんな気恥ずかしさを覚える。

カッカッカッ、カッカッカッ…

ヒールがアスファルトを削る音が聞こえる。心臓の鼓動よりも少し早い足音。それは身体の、そして生命のリズムよりも生き急いでいるようで、さらに焦燥感を募らせる。

わたしは足音が嫌い。

 

 

僕は足音が嫌いだ。

人通りの少ない住宅地。僕が一人で歩いていると、後ろから足音が聞こえる。

カッカッカッ、カッカッカッ…

ヒールがアスファルトを削る音だ。心臓の鼓動よりも少し早い足音。しかし、僕の歩幅_先月測ったときは約65cmだった_よりも歩幅の狭そうなその足音は、僕の足音に追いつかない。

コツコツ、コツコツ、コツコツ

カッカッカッ、カッカッカッ

つかず離れずその足音は、僕の心を乱す。なぜ、同じペースで歩かれることに違和感を感じるのだろう?落ち着かない気分になるのだろう?

 

 

わたしは足音が好き。

ゆっくり歩いている人の足音が好き。前をゆく人は、とても素敵な歩き方をしている。

コツコツ、コツコツ、コツコツ

わたしも同じように歩いてみようかしら?

カッカッカッ、カツカツカツ、カツン、カツンカツン…

わたしはその足音に満足した。

しかし、ペースを変えたわたしは、前の人からどんどん遠ざかる。

交わらない二人。

二人の足音は、今やシンクロナイズドスイミングのように息をぴったり合わせ、住宅地にこだましているのに…。

わたしが背伸びして速く歩けば良かったの?

それとも、彼が周りを気遣って、心を乱しながらもさらにのんびり歩けば良かったの?

もう答えは分からない。

だって、あの時、わたしはあの人の足音に心惹かれたのだから。そして、追いつくことよりも同じペースで歩くことを選んだのだもの。

僕は、
わたしは、

足音が、

嫌い
好き

~ fin ~

 

この小説が、あなたの心に響けば幸いです。

あなたの素直なお声をお聞かせください。ご感想をお待ちしております。

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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主夫で育児メンで小説家でアプリ開発者でアプリ開発講師でアプリ開発本執筆中でLINEスタンプ作者でブロガーのとしです。 このブログは、タイトル通り晴れた日も曇った日も人生を充実させるちょっとした楽しさを取り上げます。それが少しでも誰かのお役に立つ日がくれば幸いです。