小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。
今回は、わたしが書いた小説を掲載します。【創作の本棚】と題して、今後も自分で書いた小説を掲載する予定なので、お楽しみください。
前回のお話はこちらです。
あずきちゃんと虹色クレヨン
絵 ふじもなおさん(@LHnao)
~緑色と藍色のクレヨン1~
走ることが大好きな草介(そうすけ)くんと藍子(らんこ)ちゃん。
二人はライバル意識をむき出しにしながら、いつも一緒に走っています。
「草介、用意できた?」
「いつでもいいぜ。ま、今回もおれの勝ちだけどな。藍子はおれの背中をゆっくり眺めてるんだな」
「なにをー。草介、今日こそは負けないわよ!」
「あずき、いつものやつ、頼んだぞ」
「はーい。位置について。よーい、パーン」
草介くんと藍子ちゃんは、いつもこんな調子で張り合っています。今日も授業が終わると、二人はあずきちゃんの号令で教室から駆け出して行きました。
「草介、待てー」
藍子ちゃんは、前を走る草介くんを追いかけながら叫びます。
「やだねー。悔しかったら、追いついてみな」
草介くんは、後ろも振り返らずに、げた箱に向けて全力疾走します。ほとんど同時にげた箱に着いた二人は、上履きから外履きに履き替えると、またもや疾風のように駆け出します。
緑の草原に吹く爽やかな風のように走る草介くん、藍色の空を自由気ままに飛び回る風のように走る藍子ちゃん。二人はいつも、それはそれは楽しそうに走ります。
ある日の放課後。
草介くんと藍子ちゃんは、校庭で50m走をしていました。あずきちゃんはその横で、絵を描いたり、号令を出したりしています。
二人の走る様子があまりにも楽しそうなので、あずきちゃんはその姿を画用紙に残したくなりました。あずきちゃんは、素早くクレヨンを滑らせます。みるみるうちに、画用紙の上に草介くんと藍子ちゃんが現れました。
「あずきー、なにニヤニヤしてるんだよ?」
「あっ、草介くん。わたしニヤニヤしてたー? あのね。草介くんと藍子ちゃんが楽しそうに走るのを見ていたら、わたしも楽しくなったの。それでね。お絵描きしてたら、もっともっと楽しくなったの。ほらっ」
そう言ってあずきちゃんは、今描いた絵を草介くんに差し出します。
「うわー、すごーい」
藍子ちゃんが、草介くんの後ろからヒョイと顔をのぞかせて言います。
「うん、あずきの絵はすごいよな」
「えへへー、ありがと」
「でも、これ、一つ間違ってるわよ。アタシの方が草介より後ろなんておかしいわ」
「なに言ってんだ。藍子はおれに一回も勝ったことないくせに」
「なんだと! 草介、もっかい走るよ!」
「いいぜ、藍子。ま、おれの連勝記録が更新されるだけだぜ」
「今度こそ勝つわよ!」
「あずき、いつものやつ、頼んだぞ」
「はーい。位置について。よーい、パーン」
何回目の号令でしょうか。あずきちゃんのかけ声とともに、草介くんと藍子ちゃんは、矢が放たれたように飛び出しました。
いつものように、草介くんが藍子ちゃんの少し前を走っています。と、思うと、藍子ちゃんがみるみる草介くんに追いついていきます。草介くんは、藍子ちゃんの気配に気づいたのか、必死に手を前後に振り勢いをつけようとします。草介くんの足下の草が、風に舞うようにダンスしました。しかし、藍子ちゃんは、青空を巻き込むようにぐんぐんスピードをあげます。
二人がほぼ同時にゴールに駆け込みました。スタート地点にいるあずきちゃんからは、どちらが先にゴールしたのか分かりません。
その時、草介くんが小さくガッツポーズをするのが見えました。
「ハァハァ。今回もおれの勝ちだな」
草介くんは息を弾ませながら、藍子ちゃんに言います。
「あと少しだったのに……」
藍子ちゃんが悔しそうに拳を握りしめます。
「まだまだ藍子には負けねーよ。ウッ!」
「草介くん、どうしたの?」
結果が気になったあずきちゃんがやってきて、顔を歪める草介くんに尋ねます。
「いや、なんでもないよ。たまに足が変な感じするだけさ」
「なんだよ、草介。ケガでもしてるんじゃないの。病院に行ってきたら?」
「やーだよ。病院なんてまっぴらだ。おれの足はこんなに元気なんだぜ。さっきだって、藍子に余裕で勝ったからな」
「どこが余裕なんだよ! あと少しだったくせに」
その時、校舎から蛍の光が流れました。もう帰る時間です。三人はランドセルを持って学校を出ました。
それから数日後。
あずきちゃんは、今日も草介くんと藍子ちゃんのかけっこの号令をしています。
「あずき、いつものやつ、頼んだぞ」
「はーい。位置について。よーい、パーン」
草介くんと藍子ちゃんが飛び出します。スタートした時は肩を並べて走っていますが、少しずつ草介くんが前に出ます。半分ほど走ったあたりで、二人の間は二歩くらいの差がついていました。
それでも藍子ちゃんは、諦めずに前を見て走ります。草介くんの背中が遠ざかるのを、もどかしく思いながら走ります。あの背中、あの背中をいつか追い抜いてみせる。草介くんの背中を見つめる藍子ちゃんの眼差しは、そう物語っています。
あともう少しでゴール。ダメか……というように藍子ちゃんが一瞬目をつむりました。次に目を開けると、前に草介くんの背中が見えません。藍子ちゃんはそのままゴールしました。
「やったー! ついに草介に勝った!」
藍子ちゃんが、飛び上がらんばかりに喜び振り向くと、ゴールの手前で草介くんがうずくまっていました。
「草介! どうしたんだよ!?」
「ウッ、足が……」
「おいっ、草介! 待ってろ。すぐに先生を呼んでくるからな」
藍子ちゃんはたくさん走ったあとにもかかわらず、全力で職員室に向かって走ります。そして、先生と一緒に戻ってきた藍子ちゃんは、すっかり汗だくになり、肩で息をしていました。
「草介! 先生がきてくれたぞ。しっかりしろよ!」
「うぅ」
苦しそうな顔をする草介くんの足を触っていた先生は、あずきちゃんと藍子ちゃんに先に帰るように言うと、草介くんをおぶって職員室に向かいました。
次の日、朝の会で先生がこう言いました。
「草介は足を怪我したので、しばらく学校を休むことになった。心配だと思うが、今は授業に集中するように。それと、お見舞いに行くときは、親御さんに相談するようにな」
あずきちゃんと藍子ちゃんは、顔を見合わせるとうなずきました。どうやら、お見舞いに行くつもりのようですね。
その日の夕方。
あずきちゃんと藍子ちゃんは、草介くんが入院している病院へとやってきました。
「ねーねー、草介くん、元気だといいね」
「あずきちゃん、心配ないって。草介は転んでも踏んでもけろっとしてるんだから。きっと入院して走れないからって、退屈していたずらしてるよ」
二人は病院の入口をくぐると、入ってすぐの受付で草介くんの病室を尋ねました。
「草介くんでしたら、305号室です。こちらの用紙に、お名前を記入してください」
受付係はそう告げると、面会者記入用紙とペンを差し出しました。二人は順番に名前を書くと、お礼を言ってエレベーターへと向かいます。
二人が離れると、受付の中でなにやらヒソヒソとお話ししています。いったいなんでしょう? ちょっと聞いてみましょうね。
「305号室の草介くんって、例の怪我の子よね。」
「走るのが大好きで、とても足が速いらしいわよ。あんなに若いのに、気の毒よねえ」
「あなたたち、患者さんのお話をしてはいけませんよ」
「あ、婦長さん。ごめんなさい。草介くんが気の毒で、つい」
ふむふむ、どうやら草介くんの怪我は、あまり良くないようですね。それでは、急いであずきちゃんたちのところへ戻りましょう。
【緑色と藍色のクレヨン2へ続く】
晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。
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