「どうも、六郎です。『創作の本棚』へようこそ。『僕タス』こと『僕らのタスク管理ストーリー ~あの季節を忘れない~』も第三話となりました。前回はこちらです」
「なんだい六郎。えらく辛気臭いじゃないか。せっかくの前説なんだから、もっとパーっといくんだよ」
「パーっとって言われても、辰子と違ってはっちゃけられないんだ」
「妄想の中ではあれだけはっちゃけてるくせに」
「(ギクッ。話をそらさないと)さてさて、それでは前回のあらすじです。初デートになんとか間に合った僕は、待ち合わせの段階で律子ちゃんのかわいさにやられっぱなしです。そんな中、僕はとっさに機転をきかせ、律子ちゃんを僕の家に誘うことに成功しました」
「機転っつーか、妄想だろ。このスケベ!」
「辰子! なんてこと言うんだ! 僕は決して妄想なんかしてないし、スケベではない!」
「六郎くん、妄想だったの?」
「ちっ、違うよ律子ちゃん! 僕は清廉潔白だ。よろめいたのはワザとじゃないんだ!」
「ほーう、よろめいたの『は』ねぇ」
「ごほん、辰姉(必死の目配せ)。そろそろ本題に入りましょうね。さあさあ、そういうわけで、僕の家でドキドキわくわくデートがいざ開幕ですよ」
六郎(夏の恋がはじまる)
――家――
僕は家のドアを開けると、律子ちゃんを中に招き入れた。ああ、あの律子ちゃんが、この家の中に足を踏み入れる日がくるなんて。
僕は昨日読んだ小説の一シーンを思い出していた。悪の魔王が結界を抜けてきた勇者を迎え撃つシーンだ。『ふははは、ついにこの結界を抜け我が元へやってきたか、勇者とし、そして幼なじみの彼女よ。しかし、貴様らはもう我の手の内にはまっているのだ。あとはどのように料理してくれようか』
「ねえねえ、六郎くん。料理がどうしたの?」
律子ちゃんの声でわれにかえった僕は動揺を隠せなかった。どうやら、いつの間にか妄想が声に出ていたようだ。
「イヤ、ナンデモナイヨ。あ、そうそう。律子ちゃんは料理が得意なんだってね。今度、手料理を食べたいなあ、なんて」
思わず宇宙人のようなしゃべり方になってしまった。でも、律子ちゃんは特に気にしていないようだ。ホッ。
いきなり自分の部屋に案内するのも気が引けるので、僕は律子ちゃんを先導してリビングへと向かった。ああ、これから律子ちゃんと二人きりの楽しい時間がはじまるんだ。どんなお話をしようかな? 一緒にロマンチックな映画を見るのもいいかも。そうしたら、いい雰囲気になって、キ、キ、キスしちゃったりなんかして!
僕はそんなことを妄想しながら、リビングのドアを開け中をのぞいた。なあ、みんな。この時の僕の気持ち、わかるかい? かのシェイクスピアが百万の言葉を紡いでも、この無念を正確に伝えられるかどうか。
「辰子!? なんでうちにいるんだよ? 今日はお出かけじゃなかったの?」
「いやー、それが、相手にすっぽかされちまってね。まったく、ひどいヤローだ」
口とは裏腹に、サバサバした辰子は意に介していないようだ。こういうところは尊敬するんだけどな。
「それより、えらい早かったな。もしかして、ヘマをして逃げられちまったのか?」
「あの……」
おっと、あまりの驚きにうっかりして、律子ちゃんがいることを忘れていた。しまった、さっき律子ちゃんに辰子は家にいると言ってたんだ。それなのに辰子が家にいるのに驚いてたら、ウソを言ってたのがバレてしまう。僕はなるべく不自然に思われないように、律子ちゃんに辰子を紹介した。
「えーと、あの、その、あ、そうそう。律子ちゃん、辰子だよ」
そして、すぐさま辰子に向き直り、目配せしながら話しかけた。
「辰姉。僕の体調があまり良くなかったから、律子ちゃんに送ってもらったんだ。それに辰姉も律子ちゃんに会いたがってただろ? 今日は辰姉が家にいるって聞いてたから、少し上がってもらおうと思って」
僕の泣きそうな顔を見てピンときた辰子は、しれっと律子ちゃんにこう言った。
「律子ちゃんね、はじめまして。六郎の姉の辰子よ。アタシお芝居をしててね。さっきのやり取りは、もうすぐ開幕のお芝居『タスククエスチョン』の練習なのさ。アタシがいつでも緊張感を持つために、六郎に不意打ちでお芝居の練習をはじめるようにお願いしてるんだ。突然のことでびっくりさせちまったね。何もないけど、まあ、のんびりしていってよ」
僕は右手を律子ちゃんにさしだしながら作り話をスラスラと口から出す辰子を呆然と眺めていた。辰子の機転にはいつも驚かされる。
「おい、レディーをいつまで立たせとくんだ。さっさと律子ちゃんを中に案内するんだよ。せっかく来てくれたんだから、退屈させるんじゃないぞ」
僕にウインクしながら、辰子は入れ違いでリビングを出た。僕は急いで律子ちゃんをリビングに連れて入った。そして、ソファーに腰掛けるよう手招きする。二人がけのソファーに座ると、思った以上に距離が近くてドギマギした。辰子と座っている時はまったく気にならなかったのに。
気恥ずかしくなった僕は、律子ちゃんの方へと振り向き声をかけようとした。
「「あの」」
律子ちゃんも同時にこちらへと振り向き声をかけたので、二人の声がかぶってしまった。僕は焦って律子ちゃんの顔を見た。わかるかい? その時の衝撃と言ったら!
ああ、なんということだろう! 律子ちゃんの顔がこんなに近くにあるなんて! 今までは、夜空に浮かぶ月を肉眼で眺めるかのように、律子ちゃんを見ていたんだ。でも、でも、今は違う。天文台の巨大な望遠鏡で月を観察するように律子ちゃんを見ている。近くで見る君はなんてかわいらしいんだ。黒目がちの大きな目。すっと通った鼻すじ。ぷっくりとした唇。顔の産毛が光を反射してキラキラと輝いている。月から舞い降りた天女とは、まさに君のことだ。
――CM――
「今回も『僕タス』を読んでくださってありがとうございました(ぺこり)。ぼくの大活躍はいかがでしたか? 今回は、勇者六郎が律子姫を悪の魔王タツーコから取り戻すお話しでした」
「おい、六郎」
「タツーコの吐く炎を鏡岩で跳ね返したシーンは手に汗を握ったかと思います」
「おい、六郎」
「そして、一度倒したと思ったタツーコが、後ろから忍び寄ると、ガフッ」
「おい、六郎! 誰がタツーコだ、誰が!」
「ううっ、辰子。いくらなんでもかかと落としはないだろう……」
「あんたが調子に乗るからだよ。ほれ、さっさと宣伝はじめな」
「(頭をさすさすしながら)はい、それでは宣伝です。今回もタスク管理にオススメの本を紹介します。タスク管理界の仏と呼ばれるはまさん(@Surf_Fish)による一冊です」
「タスク管理を『情報管理』と『時間管理』の観点から捉えています。はまさんが試行錯誤して作り上げたタスク管理の考え方を、わかりやすく紹介しています」
「はまさんは会社員だから、会社勤めのあなたにもピッタリな内容になってるよ。Kindle版なので、Kindle端末はもちろん、iPhoneやAndroidでも読めるのさ。スキマ時間にさっと読めるので、忙しいあなたにもオススメだ」
「た、辰子。それは今から言おうと思ったのに……」
「おっと、あんたがのんびりしてるもんだから、ついつい口を挟んじまったよ。さあさあ、六郎。そろそろ締めのご挨拶だよ」
「それでは、次回の『僕タス』もよろしくお願いします(ホッ。今回は途中で切れなかった)」
「またねー」
晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。
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