はしがき
このお話は、友人Aのために書きました。届け、この想い!
本編
「はーあ、おれもうホントにヤになったよ」
「あら、どうしたの? めずらしく弱音を吐いたりして」
「だってよー。よのなか不公平すぎるんだよな」
「あら、そうなの?」
「そりゃそうじゃんかよ。会社では、仕事ができないやつの手助けばかりなんだぜ。あいつらのほほーんとしてるくせに、困ったらすぐに助けを求めてくるんだ。そのくせおれが困ってても知らんぷりときたもんだ」
「そういう話はよく聞くわね」
「そうさ。それに世の中を見てみろよ。悪いことしてるのに罰せられないどころか、おいしいめをしてるやつらがごまんといるんだぜ」
「ごまんかどうかはわからないけど、そういう話もよく聞くわね」
「だろ? そんなやつらがのさばってるっていうのに、おれはちっとも報われない人助けばかりしてるんだ。そりゃあ、不公平な世の中を恨みたくもなるってもんだよ」
「その気持ちはよくわかるわ。でもね、本当に世の中は不公平なのかしら?」
「イヤイヤ! いまのおれの話を聞いてうなずいてたじゃないか。それって不公平だって認めてるってことだろ?」
「あら、わたしはそういう話をよく聞くわね、としか言ってないわよ」
「そう言われりゃそうかもしれないけどよ。じゃあこの世の中のどこが不公平じゃないってんだよ?」
「もしもの話なんだけど、輪廻転生があるとするでしょ」
「なんだよ、とつぜん」
「まあいいから聞いて。そうするとね、本当にその人が不公平に得をしたり損をしたりしてるかっていうのは、生まれかわった人生が全部終わるまでわからないわよね?」
「まあ、理屈からいえばそうなるかな」
「ということは、世の中が不公平かどうかはわからないわよね。もしかしたらいまの世の中でいっけん不公平に得をしてる人たちは、前の人生や次の人生で不公平に損をするのかもしれないわよ」
「そんなの仮定の話だろ。輪廻転生があって全部の人生を合わせたら公平になるなんて、だれにも本当かどうかわかんねえじゃねえか」
「そうよ。だからこそ自分でえらぶ余地があるんじゃない」
「えらぶ余地?」
「そう。不公平かどうかはわからない。もしかしたら公平なのかもしれない。でも、そんなことはどっちでもいいの。あなたが人助けをするかどうかは、あなた自身が決められるのよ」
「うーん、なんだか言いくるめられた気分だな」
「たとえば公平度がわかる世界だと考えてみて」
「なんだよ、とつぜん。しかもこうへいどってなんだよ?」
「つまり、あなたの背後に天秤があって、右のお皿にはいままでに受けた恩、左のお皿にはいままでにかえした義理がのってるの」
「ああ、右と左のバランスが取れてたら、その人は公平な人生を送ってるってことだな」
「そうそう。さすがのみこみが早いわね」
「なんだよ、ほめてもなにもでねーぞ」
「あら、わたしは思ったとおりに言っただけよ。それでね、ここからが本題。あなたの背後にある天秤はつりあってる状態、つまり恩も義理もない状態。そのときに、目の前に困ったひとがいたらどうする?」
「えっ? なんだよソレ。そんなの助けるに決まってるじゃん」
「あなたならそういうと思った」
「えーっ? 当たり前じゃないか。だってよ、こまってんだろ、ソイツ」
「世の中にはね、いろんな考えかたがあるのよ」
「なんだよ? よくわかんねえよ」
「ふふっ、そういうあなたが好きなのよ」
「バッ、莫迦。なんだよ、とつぜん。はずかしいじゃねえかよ」
「あら、照れちゃって。かわいい♡」
「ほっ、ホラ。早く晩メシ食いに行こうぜ」
「つかれてるんじゃなかったの?」
「なんだかどうでもよくなったよ。それより目の前の空腹のほうが大事だ」
「そうね。とびきりおいしいもの食べましょ」
「おう! とびきりな」
〜Fin〜
晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。
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