すべてはここからはじまった 〜ぱぱんだっこ伝説の誕生〜

アプリ開発体験会へのバス旅行

2013年12月。

わたしは、関西から東京まで、夜行バスにゆられて旅をしていた。

なぜ、わざわざ東京まで行くのか?

その問いにこたえるためには、少し時間をさかのぼらなくてはならない。

アプリ開発への道はいかに開けたか

会社を退職したわたしは、自分のやりたいことを探すため、ハローライフに通って就職支援面談をうけていた。

どんな仕事をしたいのか?
自分にできることはなにか?
就職で優先することはなにか?

面談では、そういったことを話し合って、今後の進路を決めようとしていたのだ。

そんなある日のこと、就職支援面談で『アプリ開発をやりたい』という言葉がポロリと出てきた。それまでの何回かの面談では、小説家になりたい、育児に関する仕事をやりたい、とくりかえしてきて、アプリ開発なんてひとことも言ったことがなかったにもかかわらず、だ。

その言葉を発したときの気持ちを表現するなら、『ひょうたんから駒』という言葉がふさわしい。そのくらい『アプリ開発をやりたい』という言葉は、突拍子もないように感じられた。

子どものころからパソコンが好きで、MacやiPhoneが大好きで、アプリも大好きなのだから、『アプリ開発をする』という選択肢は、ごく当たり前のように思える。しかし、面談のときまで、自分でアプリをつくるという選択肢は、まったく考えたこともなかった。

いや、それはやや誇張が過ぎる。あまりにもドラマティックな記憶の改変だ。

じつは、アプリ開発をしたいと思ったことは、あった。といっても、テレビの画面に映るヒーローを見て、自分もああなりたい、と思うくらいの気持ちだ。どこか本気ではないような。そのときが来ないことはわかっていながら、いつかそうなれたらいいなと願うような。そんな、気持ちだ。

しかし、面談のときは、違った。

『おまえはアプリ開発をすべきだ』、とお告げを聞いたかのように、アプリ開発をしてみようと思ったのだ。

本気で。

なぜだろうか? いまだに、その理由はわからない。

もしかしたら──これは、ほんの思いつき程度という気持ちで聞いてほしい──じつは、ずっと前からアプリ開発をしたかったのかもしれない。それなのに、『自分にはできない』と、勝手にその気持ちにフタをして、気がつかないフリをしていただけなのかもしれない。

ハローライフでの面談で、そのフタをそっと開けてもらったのではないだろうか。そして、いままで、ためにためて熟成された気持ちが、いっきにあふれでたのではないだろうか。

理由はともあれ、わたしはアプリ開発に挑戦することを、固く心に誓った。

どのくらい固く誓ったかというと、その翌日に、東京で開催されるアプリ開発体験会に申し込みをして、さらにはMacを購入したくらいだ。

ふたたび東京行きのバスのなか

いよいよ、アプリ開発への第一歩を踏みだした。そのことに興奮して眠れないわたしは、ある夢想をしていた。

『もし自分が、アプリ開発をできるようになったら、どんなアプリをつくっているのだろうか?』

小説を書きたいから、物語のあるアプリがいいかな。育児に係わる仕事もしたいので、子ども向けのアプリもいいかな。子ども向けのアプリをつくるとしたら、育児で困っていることを解決できるアプリがいいかな。自分が育児で困っていることはなんだろう? あんなことやこんなことがあるけど……。

そうだ! これだ!

かすかな寝息とバスの振動のなか、わたしはひとり興奮していた。すでに電気が消えて暗くなったバスのなかで、アプリのアイデアがひときわ輝いている。そうか、わたしはそういうアプリをつくりたいんだ、と。

東京にて

東京に着いたわたしは、家族に関するグループブログ『fmj(ファミリーマネジメントジャーナル)』を通じて知り合った仲間たちに会いにいった(みな、わたしが東京へ行くことを知って、集まってくれたのだ。さらに、のりさん@norixnoriがクリスマスプレゼントにと、写真の花束とモバイルバッテリーを用意してくれた。このモバイルバッテリーは、いまでもお気に入りで愛用している)。そして、バスのなかで考えたアプリのアイデアについて、熱く語った。

みな真剣な面持ちで話を聞いてくれた。さらに、それならこういうアイデアもいいかもしれないね、とアドバイスまでしてくれた。

わたしは、アドバイスを忘れないようにメモに書きとめると、素敵な仲間たちに別れを告げ、アプリ開発体験会へとむかった。これから出会えるであろう、素晴らしい人生に思いをはせながら。

バスのなかで考えたこのアプリが、二年以上の時を経て完成することになるとは、このときのわたしは予想だにしていなかった。

To be continued.

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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ぱぱんだっこティザーサイト

あの『ぱぱんだっこ』が、三度アプリ界にやってくる。

2014年夏。

ぱぱんだっこエピソード4 〜The Origin〜

子どもを洗脳することで、未来の世界を牛耳ろうとする帝国軍に対し、反乱軍はパパと子どものスキンシップを駆使して抵抗していた。
体重を測るときに、スキンシップが最大の効果を発揮することを知った笹姫は、伝説の戦士KOPANがいるという星へと旅だった。
笹姫は、なんやかんやありながらも、無事に伝説の戦士KOPANと出会うことができた。
そして、伝説の戦士KOPANは、体重計型戦闘機T-65kg X-Weightingを乗りこなし、反乱軍とともに帝国軍の要塞SHIBOU STARを打ち破ったのだった。

To be continued

2016年冬。

ぱぱんだっこエピソード5 〜ぱぱんだっこ on TV〜

帝国軍の要塞SHIBOU STARを打ち破って勢いに乗る反乱軍は、この戦いに終止符を打つべく、各地でいっせいに蜂起した。
しかし、それこそは帝国軍の狙いであった。帝国軍は、子どもたちの寝付きを悪くするための新兵器『OMOSHIROY-TOY』を開発し、じわじわと反乱軍の眠りを奪っていった。睡眠不足により判断力が鈍り、窮地へと追いやられる反乱軍。
そのとき、伝説の戦士KOPANが、再び立ち上がった。彼は、ぱんだ型睡眠導入機『Mr.TV NENNE』を発明し、帝国軍の新兵器『OMOSHIROY-TOY』を片づけながら、子どもたちを寝かしつけることに成功した。
さらに勢いを増す反乱軍。伝説の戦士KOPANは、ついに、帝国軍の司令官『DARTH OTOUPAN』を追い詰めたかに見えた。
あと一歩で戦いが終わる。誰もがそう思ったとき、帝国軍の司令官DARTH OTOUPANは、衝撃の事実を告白した。
「伝説の戦士KOPANよ。おまえはわたしの息子なのだ」
その言葉にひるんだ隙を突かれ、ぱんだ型睡眠導入機『Mr.TV NENNE』を奪われたKOPANは、DARTH OTOUPANによって安眠させられ、反乱軍は総崩れした……。

To be continued

そして、2016年秋。

ぱぱんだっこエピソード6 〜ぱぱんだっこ AR〜

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エピソード6.1

勢いに乗る帝国軍は、着実にその版図を広げていった。このままでは、この世界は帝国軍のものになってしまう……。そんなあきらめにも似た気持ちが世の中をおおっていた。
しかし、反乱軍は生き残っていた。ぱんだ型睡眠導入機『Mr.TV NENNE』によって眠らされた伝説の戦士KOPANは、笹姫によってひそかに安全な場所へと移されていたのだ。
『まだ伝説の戦士は生きている』というかすかな希望を胸に、帝国軍と戦う反乱軍たち。しかし、その希望は『もしかしたら、このまま目をさまさないかも』という不安と背中合わせだった。
希望と不安が入り混じった反乱軍は、その胸中を反映するかのように、ジリジリと後退していく。
やはり、伝説の戦士KOPANを目覚めさせなくては! 笹姫は、世界中から集めた情報をたよりに、マスターYODAREのもとをたずねた。
「どうか、伝説の戦士KOPANを目覚めさせてください。そのためなら、なんでもします!」
笹姫の悲痛な叫びが、こだまする。マスターYODAREは、長時間の沈思を終えると、静かに口を開いた。
「笹姫よ。本当に何でもする覚悟があるのかな?」
「もちろんです」
笹姫の瞳には、覚悟の色が宿っていた。それを見抜いたマスターYODAREは、ふところから小さな機械を取りだした。
「よいか、この機械は『パンダクリンAR』というものだ。これをおぬしたちが使えれば、必ずや、そなたの思い人も目覚めよう」
「どうやって使えばいいのですか?」
「パーンスの導くままに」
「パーンス?」
「そなたの心に問うのだ。いま、必要なことはなにか? 思い人が眠りについた哀しみで、荒れた部屋をどうすべきなのか? とな」
「いま、必要なこと、荒れた部屋……。ハッ!」
「そうじゃ、そのとおりじゃ。あとは、おぬしのなかのパーンスが、すべて教えてくれるじゃろう」
「マスターYODARE。ありがとうございます」
笹姫は、『パンダクリンAR』を大切にしまうと、息をするのももどかしい気持ちで、来た道を引き返した。
伝説の戦士KOPANが待つ、あの荒れた部屋へと……。

To be continued.

エピソード6.2

笹姫は、伝説の戦士KOPANが眠る部屋にもどると、ゆっくりと部屋のなかを見まわした。
ああ、なんて散らかっているんだろう。
笹姫は、足の踏み場もないほどモノが散乱する様子に嘆息した。「まるで、わたしの悲しみがあふれたかのようだわ……」そうつぶやくと、笹姫は、ふところから『パンダクリンAR』をとりだした。
マスターYODAREは、「パーンスの導くままに、そなたの心に問うのだ」と言われた。
笹姫は、マスターYODAREの言葉を胸に、自らの心に問いかける。いま、必要なこと。それは……。
お片づけ!!!
この荒れた部屋を片づけなくては。
散らかったモノを片づけなければ、伝説の戦士KOPANは目覚めない。わたしのパーンスは、そうささやいている(笹姫だけにささやいている、ふふっ)。
笹姫は、『パンダクリンAR』を起動すると、カメラを部屋にむけた。
「見える! 見えるわ! この部屋のあるべき姿が! 片づいた状態が、『パンダクリンAR』によって写し出されている」
そうか、このとおりに片づければいいのね。笹姫の目に希望の光が宿る。『パンダクリンAR』は、片づけをサポートしてくれるのだわ。あとは、わたしが手を動かすだけ。
笹姫は、「さあ、やるわよ」と心の中でつぶやくと、袖をまくりあげて、せっせと部屋を片づけはじめた。心のなかにあるパーンスと、片手に持つ『パンダクリンAR』とともに。

To be continued.

エピソード6.3

「ようやく片づいたわ」
笹姫は、額の汗をぬぐうと、グルリと部屋を見まわした。そこには、先ほどまでとはうってかわって、理路整然とした世界が広がっていた。
そう。パーンスの導くままに『パンダクリンAR』を使いこなした笹姫は、あの荒れ放題だった部屋を見事に片づけたのだ。
笹姫は、目を細めて『パンダクリンAR』を見つめながら「これを使ってお片づけするのは、兄様(あにさま)とパズルで遊んでいたときみたいに楽しかったわ」とつぶやいた。そして、幼少のころに生きわかれた兄を思いうかべた。とはいっても、顔すら覚えていないほどの、ほんのかすかな思い出だ。
兄の顔がぼんやりと浮かぶような気がしたそのとき、部屋の真ん中にあるベッドがかすかにきしんだ。笹姫が顔を向けると、ベッドの上に横たわっていた、伝説の戦士KOPANが起き上がっているではないか!
「ああ、KOPAN!」
笹姫は、たまらず駆けよると、ひしとKOPANに抱きついた。KOPANは、まだぼんやりしているのか、目の焦点があわない様子でつぶやいた。
「サーサ」
「えっ? KOPAN、いまなんとおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない。すこし、頭がぼんやりしているようだ」
「しばらくおやすみくださいませ。すぐに飲み物をお持ちします」
そう言うと、笹姫は立ち上がった。しかし、笹姫の耳の中では、先ほどのKOPANの言葉がこだましていた。
「サーサ……」
笹姫は、幼いころの記憶をたどった。そうだ、パズルが完成したとき、兄様が、わたしの頭をなでながら、そう呼んでくれた。「サーサは、かしこいな」と。
記憶とともに、胸の中からあふれそうな想いを、しかし、笹姫はグッと自らのなかにおさえこむ。いまは──いまはまだ、そのときではない。いまは、反乱軍のリーダーとして、伝説の戦士KOPANとともに反乱軍をひきいて、帝国軍に打ち勝たなくてはならないのだ。
そのなかに大切な思い出がしまわれているかのように、笹姫は『パンダクリンAR』をやさしく抱きしめたあと、静かにふところにいれた。
顔をあげた笹姫の目には、先ほどまでの柔らかさはもうなかった。そこには、断固たる意志と予感めいた光がきらめいている。
帝国軍との決戦の日は近い、と……。

To be continued.

『あなたは、白と黒の奇蹟を目撃する』

Now on sale!

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2017年夏。

ぱぱんだっこエピソード7 〜こぱんたっぷAR〜

Coming soon!

各紙の声

『It’s amazing Panda!』(UsoDayo Times)
『This is legend in 22th century』(Panda week)
『Panda saikou!』(笹竹小学校新聞)

ユーザーの声

「お片付けの秋に丁度良い」
「アイコン可愛くて、このカメラほしい」
「ARで、「お片づけ」もゲームに!お片づけが楽しくなる魔法のアプリ!?」
「着眼点が面白いですね!」
「これはナイスアイデア! 初期の状態を保存するのはやってるけど、それを現実に重ねるという発想はなかった」

「もっとやりたーい」(六歳児)
「あたちも、もっとやりたーい」(三歳児)
「あーうー」(ゼロ歳児)

動画紹介

『パンダクリンAR』の動画はこちら(YouTubeのサイトへ移動します)。

開発者の声

「ええ、そうです。あれはまさに運命でした」

「勇気を持って一歩を踏み出すことができたのは、仲間たちのおかげです」

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「ええ、そうです。あの数時間の体験が、わたしの人生を変えたのです」

「これがわたしのアプリクエストの原点です」

アプリ開発という冒険のはじまり | はれときどきくもりZ

「ええ、そうです。妻のひとことがなければ『ぱぱんだっこ』はうまれてこなかったでしょう」

「これがぱぱんだっこの原点です」

なぜぱんだなのか? 〜ぱぱんだっこはこうして生まれた〜 | はれときどきくもりZ

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鍵っ子探偵ジョー【創作の本棚】

まえがき

創作の本棚へようこそ。

ここでは、わたしが書いた小説を紹介します。

ええ、すでにご用意してますよ。夜空に浮かぶ星たちのようにたくさんあるなかから、とびっきりの本を選びました。今回、あなたに紹介するのは、こちらの一冊です。

『鍵っ子探偵ジョー』

こちらは、ジュブナイルです。おっと、いくらあなたが大人だからって、お帰りにならないでくださいよ。名前だけで判断するのは早計というものです。本も、人もね。

人の魅力を知るのに時間がかかるように、本の魅力を知るのにも時間がかかります。まずは、その忙しく動く手をとめて、ゆっくりとこの一冊を手にとってみてください。

そして、願わくばこの一冊が、あなたのあの日の思い出を呼びさますきっかけとなりますように。

さあ、表紙を開いて、いざ『鍵っ子探偵ジョー』の世界へお進みください。

序章

 てりつける太陽。
 ふりそそぐセミのなきごえ。

 そして、猫みたいな顔をしたおじいさん。

 これからぼくが話すことは、あの夏におきたほんとうのこと。

 そう。忘れられないあの夏──『鍵っ子探偵ジョー』が誕生した夏──のできごと。

◆◇◆◇

 やあ。こんにちは。ぼくのこと知ってるかい?

 え? 知らないの?

 じゃあ自己紹介するね。『ひとに名前をたずねるまえに、自分の名前をいうのがレイギなんだよ』ってママがいってたからね。

 ぼくは、夏目颯太(なつめそうた)。星の海小学校の三年生なんだ。

 えっ? となりにいるちいさい子はだれかって?

 こいつは、ぼくのいもうとの風子(ふうこ)。ホラ、風子。いまいくつ? ありゃ、それだとよっつになっちゃうよ。風子は三歳なんだけど、まだうまくみっつができないんだ。

 えっ? ぼくたちよく似てるねって?

 なにしろぼくたちは『いっしんどうたいしょうじょたい』だからね。あっ、いまのは、ぼくのパパがよく言ってるダジャレなんだ。なんのことかはわからないけど、仲がいいっていみらしいよ。

 えっ? 首からさげてるのはなにかって?

 これはね、おうちの鍵なんだ。あっ、しーっだよ。しーっ。ママに、知らないひとにカギのことは話しちゃダメよっていわれてたんだった。

 うん、そうだよ。ぼくは鍵っ子なんだ。

 パパとママはおしごとにいってるから、ふたりが帰ってくるまで、ぼくと風子でおるすばんしてるんだ。んー、さみしいことはさみしいけど、テレビをたくさんみられるから楽しいよ。だって、ママがいると、あんまりたくさんみられないんだもん。

 そうだ! さいきんハマってるアニメがあるんだけど、しってる?

 あっ、もちろん、宿題もちゃんとやってるよ。だって、宿題しないと、晩ごはんのあとのみかんが食べられないからね。

 あ、そうそう。ハマってるアニメのことだよね。ヒントは、この鍵なんだよ。

 ふふふ、わかんない? ちょっとむずかしかったかなー。そのアニメのなまえはね──

鍵探偵ジョー

「このカギでナゾのとびらをひらいてみよう」

 タイトなスーツを颯爽と着こなした青年は、凛とひびく声でそういうと、胸ポケットからだしたカギを目のまえにかかげた。

「ジョー! 犯人がわかったの?」

 パンツスーツ姿の若い女性が、驚いた声でたずねた。ジョーと呼ばれた青年は、となりに立つ女性のほうを見ると、ゆったりと口を開く。

「ああ、そう言ったんだよ。若菜くん」

 若菜と呼ばれた女性は、信じられないと首をふりながらつぶやく。

「ジョー。長いことあなたの助手しているけど、あなたにはいつも驚かされるわ」

 そのやりとりを眺めていた男が、ジョーに顔を近づけて、恫喝するようにな低い声で言う。

「おいおいおい。オレが犯人だってのかい? いくら名探偵だっていっても、さすがにそれは言いすぎなんじゃないかねぇ。北倉仗助(きたくらじょうすけ)さんよ」

「星野さん、僕のことは、鍵探偵ジョーと呼んでもらおう」

 そう言うとジョーは、手の中にあるカギを高くかかげた。それは、まるで何百年も海のそこに沈んでいたかのような風格をそなえている。はつらつとした若さあふれる彼が、そのカギをとりだすさまは、彼のなかにひそむ老獪さを象徴するかのようだ。

「あなたはさきほど、この家をたずねたことはない。そう言いましたね?」

 ジョーに声をかけられた星野は、すずしい顔でこたえる。

「ああ、たしかにそういったぜ」

「それは不思議ですね」

「なにが不思議だってんだ。北倉、いや、ジョーさんよ。この家の間取りにくわしいのは、持ち主から相談されて図面の設計に携わったからだ。警察に聞いてくれたっていいんだぜ。なにもあやしいところなんてないのさ」

「そのお話しなら、すでになじみの刑事さんからうかがってますよ。図面の設計までしておきながら、いちどもこの家をたずねたこともない。それも知っています」

「だから、いったいなにが言いたいんだ? そんな話、いま関係ねえだろ。設計した家に来ようが来まいが、オレの勝手じゃねえか。それとも、この家に来たことがないから逆にあやしい、なんてヘリクツじゃねえだろうな?」

「そんなことではないんです。そんなあいまいなことでは」

「じゃあ、いったいなんだってんだ!?」

 ジョーのもったいぶった話しかたが気にいらないのか、星野の声にいらだちがふくまれていく。

「あなたが、本当はこの家に来たことがある。そう言っているのですよ、星野さん」

「ハッ、バカバカしい。アリバイだってバッチリあるんだ。なにをいまさら」

 よゆうをみせているが、星野はあきらかにおちつきがなかった。ジョーは、そんな星野をいちべつすると、ゆっくりと部屋を見まわしたあと、瞳のおくにあるキラメキをとばすように、鋭く言った。

「それならなぜ、あなたの指紋があそこにあるんだ!!」

「なっ、なんだって!?」

 星野はおどろきをかくせない顔で、部屋の片隅にすばやく視線をやる。ジョーは、その一瞬のうごきをみのがさなかった。

「あのテーブルの下だ!」

 ジョーの声と同時に、若菜が崖を駆けおりるカモシカのような身のこなしでテーブルの前に移動すると、両手を広げて立ちはだかる。

「これは証拠物件です。これからどなたも手を触れないでください。この場に近づこうとすれば、いかなる理由でも証拠隠滅行為とみなされます」

 星野がいまいましげな顔でジョーをにらんで「ハッタリか」というと、ジョーはケロリとした顔で「ええ、そうですよ」とこたえた。

「なにが鍵探偵ジョーだ。ただのハッタリやろうじゃねえか!」

 星野のことばに、ジョーの眉がぴくりとあがる(これは、彼のクセだ)。そして、その顔には、彼の手にある古めかしい鍵とおなじ、ある種の荘厳さがうかびあがった。

「先ほどの『手』は、たしかにハッタリです。しかし、『ハッタリやろう』と言われるのは心外ですね。ご希望なら、あなたがここに来た証拠を100個ほどお話ししてもよろしいのですよ。でも、それでは退屈でしょう?」

 ジョーはひと呼吸おくと、手のなかの鍵をながめ、つぎに星野に視線をやった。そして、大げさな仕草で肩をすくめて、両手を広げる。

「あれは、ちょっとした演出なんですよ」

「なんの演出だってんだ?」

「人生の、ですよ。あなたがこれから体験する規則正しい人生──何十年とつづく監獄生活──に、ほんのすこしのスパイスをプレゼントしてさしあげたのです。何年かのちに、あなたはきっと、今日のできごとに感謝しますよ。ああ、あのときは、なんと刺激的で退屈のない人生だったのだろう、と」

 そう言うと、ジョーは、鍵をガチャリとまわすような仕草をした。鍵がまわりきると同時に、冷たくて重い牢獄のとびらがしまるような音を、その場にいた全員が感じた。星野は、その重みにつぶされるようにひざまずくと、頭をかきむしりながら泣きはじめた。

「さっ、事件は解決しました。あとは警察にまかせて、われわれは退散するとしましょう。おいしいラーメンが食べたいですね」

 先ほどまでとは正反対のようすで、ジョーはニコニコと歩きはじめた。

 子どものような無邪気さと、熟年の老獪さをあわせもつ。まさに、彼の手のなかにあるカギのような不思議な男。

 それが、あらゆるナゾの扉をひらく男。鍵探偵ジョーなのだ。

颯太、猫じいさんに出会う

 チャランランラーン♪

 おわりのうたがはじまると、プールからあがったときみたいに、ふーっといきをはいた。テレビのなかでおどる、ジョーと若菜をみながら、ぼくはさっき見たばかりのおはなしを思いだしていた。

 あー、今週の『鍵探偵ジョー』もおもしろかったなあ。まさか、星野さんが犯人だったなんて。それに……。

 ピンポーン♪

 あっ、玄関のチャイムがなってる。パパとママはまだ帰ってこないはずだし、いったい誰だろう? ぼくは、マクラをだきかかえながら、すぴすぴ寝息をたてる風子を横目でみると、玄関にむかって走っていった。

 このときは想像もしてなかったんだ。まさか、これがあの事件のきっかけになるなんて。

 このぼく、鍵っ子探偵ジョーこと、夏目颯太がはじめて解決した事件『消えた猫はどこに? 猫じいさんの血と涙』のきっかけになるなんて……。

 つづく

あとがき

鍵っ子探偵ジョー、いかがでしたか?

ご感想は、この記事のコメント欄か、わたしのTwitterアカウント@toshi586014までお願いします。

じつは、このお話は、まだ執筆中です。ボチボチ書いていきますので、つづきを気長にお待ちくださいね。

それでは、またお会いできる日を楽しみにしています。

 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

 

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iPhoneアプリ開発オンラインサポート『アプリクエスト 光の玉』はじめます

iPhoneアプリ開発をはじめたいあなたをサポートします

以前に比べてアプリ開発の情報はとても多くなりました。

書店のプログラミングコーナーをのぞくと、iPhoneアプリ開発の本がずらりと並んでいます。また、多くの開発者が、アプリ開発の情報をネット上にあげてくれています。

そのため、アプリ開発の敷居はグッと下がりました。

しかし、そうは言っても、アプリ開発というのは、決して簡単ではありません。

とくに、はじめたばかりの頃は、わからないことばかりで、何から手をつけたらいいのか途方にくれることも珍しくありません。また、本を読みながらプログラムを書いたもののつまずいてしまったり、ネットで調べたコードを貼りつけたらエラーが出てしまって動かない、ということもよくあります。

こういったつまずきや疑問は、開発者に相談すればすぐに解決することが少なくありません。かくいうわたし自身も、1週間も悩みに悩んだ疑問を、『アプリクリエイター道場』主催者で、わたしのアプリ開発の先生であるあきおさん(@akio0911)に質問して、たったの10分で解決してもらったことがあります。

とはいえ、個人でアプリ開発をはじめた場合は、まわりに質問できる人がいないこともあります。また、質問してばかりだと気がひける、ということもあります。

そんなあなたのお悩みを解決するために、オンラインで質問できるサービス『アプリクエスト 光の玉』を開始します。

冒険者であるあなたは、アプリ開発で疑問に感じたこと・わからないこと・アドバイスがほしいことなどを、メールで送ってください。冒険者の案内人である光の玉サポーターが、メールでご回答します(わたしのプロフィールはこちらをご覧ください)。

お申し込みは、こちらです。

光の玉をたずさえて、いざアプリ開発という冒険の世界へ旅立ちましょう!

料金体系

当サービスはチケット制です。
ご質問1回につき、チケットを1枚ご購入ください。

チケットは、つぎの2種類があります。

チケット1枚 3,000円
チケット5枚セット 14,000円
(チケットの有効期限は、ご購入日から30日間です)

当サービスに、新規にご登録いただいたかたには、1,000円引きのお試しクーポンをプレゼントいたします!
(クーポンのご利用は1回限りです)

また、ご登録いただいたかたには、スタンプカードをご用意します。ご質問1回につき、ひとつスタンプを押します。スタンプが5個になると、ご質問1回無料クーポンをプレゼントいたします!
(スタンプの有効期限は、最後にスタンプを押した日から60日間です)

チケット5枚セットをご用意したワケ

チケット5枚セットをご用意したのには理由があります。

個人開発者には、仕事とは別にアプリ開発をするかたが多いです。
そうすると、平日は仕事をして、週末に開発をするというパターンになります。週末に疑問が1回ずつでれば、ひと月で合計4回。少し余裕をもたせて、5回にしています(さらに、5回のご質問でスタンプが5つたまるので、1回分のご質問が無料になります!)。

週末1回につき、疑問がひとつというのは少ないんじゃないの? と思われるかもしれません。しかし、疑問点をすべて質問してしまうと、その場では問題が解決するかもしれませんが、次回に同じような疑問点にぶつかったときに、またつまってしまいます。
そうならないためにも、まずは、できるだけご自分で解決できる道を探ってみてください。いっけん遠回りなようですが、そうすることで、疑問を解決する力が身につきます。その解決力があれば、新たな疑問にぶつかったときでも、自分で解決する道を探すことができるようになります。

そうは言っても、初心者のころは、きっかけがないと解決することが難しい疑問があります。そんなときに、ぜひ当サービスをご利用ください。

当サービスは、あなたのご質問にお答えするだけでなく、あなたの解決力を向上するお手伝いをしたい。そうすることが、いつかあなたが素晴らしいアプリをリリースするお手伝いになる。そう考えております。

注意事項

当サービスは、アプリ開発入門者〜初心者向けです。
当サービスがサポートする開発環境は、Xcodeです。また、プログラミング言語は、SwiftとObjective-Cです。
当サービスは、あくまでもご質問におこたえするものです。プログラムを代わりに書いたり、テストを行うわけではありません。
ご質問をいただいてから、当日〜3日でご回答いたします(混雑状況によっては、遅れることもあります)。
質問回数のカウントは、1つの質問で1カウントです。メールの件数ではありません(1つのメールに複数の質問が含まれる場合は、複数回としてカウントします)。
質問にお答えできない場合もあります(その場合は、質問回数にはカウントされません)。

お申し込みはこちらから

『アプリクエスト 光の玉』に興味があるあなたは、タイトルに、『アプリクエスト光の玉いざ冒険の旅へ!』をコピペして、こちら↓のアドレスにメールを送ってください。

toshi586014+questあっとgmail.com
(あっとを@に変換してください)

送っていただいたメールアドレスに、ご案内を返送いたします。

また、サービスに関するご質問などがあれば、同じアドレスにおくってください。

あたらしい世界への扉は、目のまえに開かれています。あとは、あなたが一歩を踏みだすだけです。さあ、楽しいアプリクエストの世界へようこそ!

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好きなことと得意なことと役に立つことの境界線にぼくは立ちたい

仕事とは、人が嫌がることをするからお金をもらえるんだ

だれが言ったのかは忘れましたが、『仕事とは、人が嫌がることをするからお金をもらえるんだ』と聞いたことがあります。

その言葉を聞いた当時──たぶん、高校生か大学生のころだったかと──は、なるほどたしかにそのとおりかもしれない、と思いました。

しかし、最近は、それだけではないかもしれない、と感じています。

そのキライは、どこから?

たとえば、ちまちまプログラムするなんて、ぜんぜん楽しくないしキライだ、という人からすれば、アプリ開発なんて嫌な仕事でしょう。

でも、わたしにとっては、好きな仕事です。

ちまちまプログラムすることも、果てしなくテストすることも──たまにめんどくさくてイヤなときはありますが──楽しいです。

小説も、書いているときは、出口が見えず苦しむことがしょっちゅうあります。また、書きあがってからも、ひたすら校正をして、たったひとつの句読点をつけたりはずしたりすることに、何時間もかけたりします。でも、やっぱり、わたしにとっては、楽しくて好きなことです。

こういうことが嫌いな人にとっては、小説を書くなんてゼッタイやりたくない、となるのでしょう。

そういう意味では、『仕事とは、人が嫌がることをするからお金をもらえるんだ』という言葉は、正解と言えます。

ただ、その言葉を聞いた当時の自分に足りなかったのは、いろんな視点からものを見ることでした。

自分はその仕事が好き? キライ?

つまり、『人が嫌がる仕事だからといって、自分も嫌がる必要はない』もしくは、『(人は嫌がるかもしれないけど)自分が嫌なことではなく、好きなことを選択できる』ということに気がついたのです(この言葉を聞いたときは、なぜか、人が嫌がる仕事=自分も嫌がる仕事、という思い込みがありました)。

とはいえ、自分が好きなことでも、仕事にならないかもしれません(もちろん、なるかもしれません)。

そこで必要な、もうひとつの視点が『役にたつこと』です。(余談ですが、わたしが仕事を選ぶモットーは『個人的にも社会的にもおもしろくて役にたつ』です。くわしくはこちらの記事『育児×副業×テレワーク・リモートワーク』をご覧ください)

好きなことが、役にたつことであれば、それが仕事になる可能性が高くなります(あくまで可能性です)。

また、好きなことで、なおかつ得意なことだと、可能性はさらに広がります。

なにしろ、好きだから、時間がたつのを忘れるくらい取り組むことができますし、なにより楽しいです。さらに、『得意』がプラスされると、好きだから楽しい→得意だからできる→できると楽しい→ますます好きになる、という素敵スパイラルができあがります。

ただ単に好きなだけでは、仕事にならないかもしれない。
得意だからやるだけでは、仕事にならないかもしれない。
役にたっても嫌いならば、つづけられないかもしれない。

というわけで、わたしは、『好きなことと得意なことと役に立つことの境界線に立ちたい』わけです。

放浪の末に

ながらくフラフラとさまよってきましたが、アラフォーにして、ようやく自分にとっての境界線が見つかりました。

それが、いまの仕事である、アプリ開発やアプリ開発講師や小説家やLINEスタンプ作者や主夫です。

これらの仕事は、わたしにとって、まさに境界線だと感じています。とはいえ、いまは好き比率だけが高いので、すこし境界線から離れています。これから得意比率と役にたつ比率をあげて、じょじょにみっつの境界線に近づいていこうと思います。

そしていつか、その境界線にたったとき、わたしは素敵な景色を目にするでしょう。その日をとても楽しみにしています。

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

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