小説家ブロガーとし(@toshi586014)です。
今回はわたしが書いた小説、題して『魔法少女プリティーもなお』を掲載します。
このお話は、Twitterで開催した『RTしてくれた人を主人公にしたお話を書く』という企画から生まれました。ありがたいことに、三名の方がご応募くださいました。それでは、まずはふじもなおさん(@atelier_monao)のお話をお楽しみください。
あっ、このお話は完全にフィクションです。お名前はお借りしていますが、実際の人物や出来事とはまったく無関係です。そう言えば……と思い当たる節があっても気にしないでくださいね。
それでは、ふじもなおさんのお話『魔法少女プリティーもなお』はじまりはじまり~。
『魔法少女プリティーもなお』
「レインボーカラーグラスセーーーット!」
ふじもなおは世界を照らす朝陽のようにキラキラと輝く声で叫んだ。その右手にはポケットから取り出した派手な七色のメガネが握られている。円を描くような手つきでメガネをかけると、左手を天に向けて高く突き上げ、右手の人差し指でメガネのブリッジを軽快に叩いた。
次の瞬間、メガネから七色の光が放たれた。光は回転しながらその輝きを増し、周りにいる異形のモノたちは目をくらませる。
ようやく光が収まったかと思うと、光の中心から目にも鮮やかな七色の衣装をまとった少女が姿を現した。
「出たなっ! またしても我々の邪魔をするのか!」
異形のモノたちの中でもひときわ大きな【モノ】が、目をしばたたせながら叫ぶ。
「もうあなたたちの好きにはさせないわよ。魔法少女プリティーもなおがあなたの心の歪みをまっすぐにしてあげるわ」
プリティーもなおはとびきりの笑顔を浮かべ、ウインクとともに決め台詞を投げつける 。
「われらが『サングラズ』の世界征服を邪魔するヤツは、このレイバーン様が排除してくれる! 我が忠実なるグラサーたち。やれい!」
ひときわ大きな『レイバーン』と名乗る【モノ】がその大きな羽を振りかざすと、周りにいる『グラサー』たちが奇声をあげながらプリティーもなおにいっせいに襲いかかった。
「あなたたちの心の歪みはいくつ? このファイヤーランドルト環で測ってあげる」
プリティーもなおは、ポケットから赤色のレンズを取り出し、メガネにはめ込んだ。レンズがカチッとはまったかと思うと、メガネから赤色の光が飛び出した。すると、そこから人の顔ほどあるランドルト環が飛び出した。
『説明しよう! ランドルト環とは、視力検査をするときに使うCの字型をしたアレのことだ!』
ランドルト環を手に、プリティーもなおは華麗にステップを踏む。
「まずはあなたからね。ハイ、どっち?」
Cの字の穴が空いた部分を右に向けると、プリティーもなおはグラサーの一人に尋ねる。すると、そのグラサーはおずおずと下を指差した。
「ザンネン。左でした。あなたの心の歪みは0.01よ」
プリティーもなおが左手で空中に大きく0.01と書くと、グラサーはガックリとうなだれた。その隙を逃さず、プリティーもなおは再びポケットに手を突っ込み、青色のレンズを取り出した。レンズをメガネにはめ込みながら、プリティーもなおは叫ぶ。
「アイスクリームユースクリーム拡大鏡ーーー!」
プリティーもなおは声高らかにメガネから飛び出す拡大鏡を手に取ると、うなだれるグラサーに向かって拡大鏡を掲げる。
拡大鏡に映し出されたグラサーは、その真っ黒な身体を激しく悶えさせながら甲高い悲鳴をあげる。やがて悲鳴が収まると、そこには裸の女性が横たわっていた。
『説明しよう! このアイスクリームユースクリーム拡大鏡は、グラサーの心に潜む小さな憎しみの心を探し出して凍らせてしまうのだ。憎しみの心が凍るとき、グラサーは断末魔の叫びをあげる。しかし、心配はいらない。叫び声とともに憎しみの心は浄化され、元の人間の姿に戻る。そして、二度とサングラズに操られることはないのだ』
プリティーもなおはクルリと振り返り、次のグラサーに狙いを定める。そのとき、朝陽を背に受けてにぎやかな声が空を駆けて来た。
「もなおちゃーん、ちょっとまってやー」
声の主はプリティーもなおの前に来ると、肩で大きく息をした。
「はー、よかったー。間に合わへんかと思うたわ。もなおちゃん、うちにもやらせてやー」
『説明しよう! この関西弁の女の子も魔法少女なのだ。お笑いとツッコミの伝道師。その名もファニーちひろ』
ファニーちひろは、グラサーの方へと向き直ると、胸元からハリセンを取り出した。そして、おもむろにハリセンをしごきながらグルリと見回して舌なめずりする。
「さあさあ、今日のお客さんは……と。どいつもイタリアもフランスもシケた顔してまんなあ。ほんなら、うちがいっちょ笑かしたろ」
ファニーちひろがハリセンを高らかに掲げると、ハリセンから吉本新喜劇のテーマソングが流れる。ファニーちひろは音楽に乗りながら、グラサーの周りを軽やかに回りはじめた。
「ほんなら行きまっせー。布団が吹っ飛んだー!」
ファニーちひろの叫び声でグラサーの動きが固まる。
「よっしゃー! 今日のつかみもバッチリやでー。お客さん、どっかんどっかんきてるやん」
明らかにスベって固まっているはずなのに、ファニーちひろは大ウケしたと思い込んでいる様子だ。高らかに笑いながら、グラサーの一人に「なんでやねーん!」とハリセンを叩き込む。グラサーからすれば、そっちこそなんでやねんという気持ちになることだろう。
そんなグラサーの気持ち(?)も裏腹に、ファニーちひろは次々にツッコミを入れていく。そのたびにグラサーが人間の姿に戻り、あたりは裸の男女で埋め尽くされていく。まさにファニーな状況に、思わずプリティーもなおが微笑む。そして、最後の一人のグラサーへとアイスクリームユースクリーム拡大鏡を向け、人間の姿に戻した。
最後の一人を元の姿に戻すと、プリティーもなおはメガネのブリッジを軽快に叩き、決め台詞を口にした。
「プリティーもなおは、今日もあなたの心の歪みを矯正するわ」
レイバーンはワナワナと黒い身体を羊羹のように震わせ、プリティーもなおを指差すと、その姿以上のドス黒い声で呪いの言葉を吐いた。
「またしてもやってくれたな! この借りは必ず返す。いいか、必ずだぞ!」
プリティーもなおは青色のレンズをメガネから外すと、淡いピンクのハンカチで拭いはじめた。そしてレンズをポケットにしまうと悠然と応える。
「レイバーンさん、そろそろあなたの心の歪みも直してあげましょうか?」
レイバーンは苦々しい様子で顔を歪めると、捨て台詞を残して飛び去った。
「オマエのメガネ100円均一!!」
「オマエのグラサンまっくろー!!」
ファニーちひろが捨て台詞(?)を言い返すと、レイバーンが飛び去った方角から何やら聞こえてきたが、すでに遠いためかぼそいささやきのように風に消えていった。
『今日もプリティーもなおのおかげで地球の平和は守られた。ありがとうプリティーもなお。悪の組織がある限り、プリティーもなおのメガネが光る』
「ねえ、もったさん。さっきから何をブツブツ言ってるの?」
プリティーもなおはメガネを外して変身をときながら隣にいるふじもったに声をかけた。
『説明しよう! もったさんことふじもったはプリティーもなおの夫である』
「ねえねえ、さっきから誰に向かって説明してるの?」
プリティーもなおあらためふじもなおは、ふじもったの顔を覗き込みながら尋ねる。
『この世界のどこかにいる、明日への希望に話しかけているのさ』
「そっか。じゃあ、お家に帰ってご飯にしましょう」
その様子を見て、ファニーちひろあらためちひろは、うらやましそうにつぶやく。
「二人はいつも仲良さそうでええなあ。うちも結婚したーい。でもなあ、魔法少女協会はオジサンばっかやし。違うお仕事探さなあかんかなあ」
「ふふふ、ちひろちゃんの前にはきっと素敵な人が現れるわよ」
「ホンマ!? もなおちゃん、ホンマにそう思う? せやな、うちくらいかわいくておもろかったら、男がほっとかへんやんな。ほんなら、うち帰るなー。もなおちゃん、もったさん、またなー」
流れるようにしゃべったかと思うと、そのままの勢いでちひろは家に向かって駆け出した。ふじもなおとふじもったはちひろを笑顔で見送ると、朝陽を背に受けながら、平和な街を歩いて家路についた。
○●○●
平和な日常を送りながらも、サングラズとの闘いは続いた。
四天王の一人であるレイバーンを苦労の末に倒したプリティーもなおとファニーちひろの前にすぐさまもう一人の四天王オクターゴンが現れこう言う。
「ふふふ、レイバーンを倒したとていい気になるなよ。プリティーもなお、そしてファニーちひろとやら。ヤツは我々サングラズ四天王の中でも最弱。このオクターゴン様の足下にも及ばぬひよっこよ」
その言葉を聞いてファニーちひろはオクターゴンに食ってかかる。
「なんやてー! オクターゴンかペンタゴンか知らんけどなあ、あんたの方こそ足下どころか地面の下に潜ってブラジルまで行ってまうくらい、うちらの足下にも及ばへんわ!」
「ふふふ。威勢の良いヤツは嫌いではないが、このオクターゴン様の実力を見てもそのような口を叩けるか楽しみだ」
「牛と猫が寝込んだ! モー、にゃむい!」
ドカーン!
ファニーちひろがいつものダジャレとともにハリセンをぶち込むと、オクターゴンは遥か彼方へと飛んで行った。
「どや! うちのダジャレは天下一品やろ。おっと、天下一品って言っても、こっさりちゃうでー」
ファニーちひろは、ハリセンでラーメンを食べる仕草をしながらオクターゴンが飛んで行った方向へあっかんべーをした。すると、新たに二人のサングラズが、優雅に空を飛んで姿を現した。
「「オクターゴンを倒したからと言って……」」
「ツーフィンガーメガネクラッーーシュ!」
「ダジャレを言うのは誰じゃ? うちじゃー!」
二人のサングラズが話し終わる暇もなく、プリティーもなおとファニーちひろは二人同時に必殺技を繰り出した。またもや二人のサングラズは遥か彼方へと姿を消した。
「プリティーもなおは、今日もあなたの心の歪みを矯正するわ」
「矯正っちゅーか、飛んでってもうたけどな。あいつらもしかして残りの四天王やったんかな?」
ファニーちひろがハリセンを野球のバットに見たててスイングの練習をしながら言った。すると、どこからともなく声が聞こえる。
「フフフ。我がサングラズの四天王を倒すとはな。我はお前たちを見くびっていたようだ」
「誰なの?」
「誰や!?」
二人が周りを見回すと、空中に黒い影が浮かんでいる。影はやがて色を濃くしたかと思うと、そこに巨大なサングラズが現れた。
「我こそは偉大なるサングラズ。全てのグラス界を統べる者だ」
「ははーん、あんたが大将っちゅーわけか。ほんなら、あんたを倒せばええんやな」
「グラス界を乱すサングラズ! プリティーもなおがあなたの心の歪みを矯正してあげるわ」
サングラズは、プリティーもなおとファニーちひろを睥睨する。その視線に二人は思わず身震いした。
「なんやー。ガンつけるんやったらうちも負けへんで! ガンつけ選手権日本代表やからな!」
「ちひろちゃん、そんな選手権があるの?」
プリティーもなおが真面目な顔で尋ねると、ファニーちひろは右手をスパーンと振り抜いてツッコミを入れる。
「何言うてんねん、もなおちゃん。シャレやんか。シャレ」
「あっ!」
プリティーもなおが叫んだので、ファニーちひろは振り返った。すると、サングラズがいたはずの空間には誰もおらず、爽やかな青空が広がっていた。
「あれ? もなおちゃん、サングラズどこ行ったん?」
プリティーもなおが太陽の向こうの青空を指差して答える。
「ちひろちゃんのツッコミで飛んで行っちゃった」
ふふふ、プッ、あはははは。
どちらともなく笑いが漏れ、やがてあたりに大きな笑い声が響き渡った。
「なんや、あいつ。えらい威張りくさってるからどんだけすごいんかと思うたら。まあ、うちのツッコミが天下一品やから、いうのもあるけどな」
「ふふふ、そうね。ちひろちゃんのツッコミは天下一品のこっさりよね」
プリティーもなおがそう言ってちひろに向き合ったとき、カチリと小さな、しかし、世界にヒビが入るような音が聞こえた。かと思うと、プリティーもなおの変身がとけ、メガネがポロリと顔から落ちる。
「あっ!」
ふじもなおは落ちてくるメガネを受け止めようと手を伸ばした。しかし、その手は虚しく空を切り、かろうじて指先がレンズに当たるだけだった。
パリン。
レンズにヒビでも入っていたのだろうか? 思ったよりも乾いた音がしてレンズが割れた。
「あっ! もなおちゃん!」
『説明しよう! メガネが割れてしまったのだ(アセアセ)』
周囲の驚きをよそに、ふじもなおはなぜか運命のようなものを感じていた。あのレンズは、【わたしに】割られるためにあったのだ、と。
「あーあ、もなおちゃん。メガネ割れてもうたら変身でけへんやん。まあ、サングラズいうヤツもやっつけたから、もう変身することもないやろうけど。あっ、そうや! なんやったら、うちと一緒に新しい商売せーへんか? もなおちゃんとうちが組んだらがっぽがっぽやで。」
そう言いながらちひろは親指と人差し指を丸くしてニヤリと笑う。
「そうねえ……。せっかくの魅力的なお誘いだけど、お断りしようかな。実はね、わたしやりたいことがあるんだ」
「なんやってー!? こんなええオンナをふって、いったいナニするつもりなん?」
「ふふふ、ごめんねちひろちゃん。わたしね、似顔絵を描くの。世界中のみんなが笑顔になれるような似顔絵を。前からそういうことしたいなあって考えてたんだけど、ちょうどいい機会かもね。それに、お店の名前も思いついたわ」
「なんていう名前なの?」
「えっとね、ふじもなおのアトリエ」
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