小説家志望ブロガーとし(@toshi586014)です。
今回は、わたしが書いた小説を掲載します。【創作の本棚】と題して、今後も自分で書いた小説を掲載する予定なので、お楽しみください。
前回のお話はこちらです。
あずきちゃんと虹色クレヨン
絵 ふじもなおさん(@atelier_monao)
~折れた黄色のクレヨン1~
今日もあずきちゃんは絵を描いています。
よく晴れた夏の日。黄色い太陽が照りつける校庭にあずきちゃんはいました。かわいいあずき色のリボンがついた麦わら帽子をかぶって、立派な銀杏の木に寄りかかって絵を描いています。
あずきちゃんは、赤色のクレヨンを持って、画用紙の上を自由自在に走らせます。次に、橙色のクレヨン。そして、緑色と藍色のクレヨン。次々にクレヨンを手に取っては、淀みない動きで画用紙の上に新たな世界を築いていきました。
一呼吸おいて、あずきちゃんは黄色いクレヨンを手に取りました。そして、クレヨンを画用紙の上に持っていきます。黄色いクレヨンであずきちゃんは何を書くのでしょうか?
しかし、画用紙を前にしたあずきちゃんは、黄色いクレヨンを握りしめたまま止まってしまいました。いったいどうしたのでしょう? いつもならスラスラと動く手がぴくりともしません。
あずきちゃんの手は、動揺したように画用紙の上をさまよいました。黄色いクレヨンが、モンキチョウのようにひらひらと舞います。しばらくして、黄色いクレヨンは空中でピタリと止まりました。かと思うと、獲物を狙うスズメバチのように勢いよく画用紙に着地しました。
力を入れすぎたのでしょうか。画用紙に着地した黄色いクレヨンは、その衝撃を受け止められずヒビが入ってしまいました。そして、あずきちゃんの手の中で真っ二つに折れてしまったのです。
「あっ!」
あずきちゃんは、折れた二つのクレヨンを両手に取り、そっと合わせました。そして、元どおりになりますように、と祈りを込めて手を離します。しかし、黄色いクレヨンはくっつくことなく、再び二つに分かれました。
「ああ、大事なクレヨンなのに……」
あずきちゃんはそうつぶやくと、折れた黄色いクレヨンを静かに箱に戻しました。
真夏の太陽が、折れた黄色いクレヨンと描きかけの絵に、キラキラと照りつけていました。
次の日。ここは学校の教室です。
授業中にあずきちゃんは、ぼんやりと外を眺めています。
「こらっ、あずき! またお絵描きしてるんじゃないだろうな!」
「あっ、せんせー。わたし、お絵描きしてないよ。ぼんやりしてたの」
先生に突然名前を呼ばれたあずきちゃんは、前を向いて答えます。
「そんな素直に答えるやつも珍しいもんだ。それに、あずきが絵を描いていないのも珍しいな。今日はクレヨンを持ってくるのを忘れたのか?」
「ううん。持ってきてるんだけど……」
「そうか? とにかく、今は授業中だ。ぼんやりしてないで、授業に集中するんだぞ」
「はい、先生」
あずきちゃんは返事をしたものの、相変わらずぼんやりしています。先生は、あずきちゃんのそんな様子を見ていました。
その日の放課後。
教室にはたくさんの生徒が残っています。皆口々に、これから何をして遊ぼうか、と話しあっています。紅太くんはサッカーをする仲間を集めています。草介くんと藍子ちゃんは今日も走るみたいですね。しかし、あずきちゃんは、ランドセルに荷物をつめて、帰る用意をしていました。
あずきちゃんが教室を出ると、ちょうど先生が戻ってきました。先生は、照れくさそうにあずきちゃんに声をかけます。
「おや? あずき、今日は早いんだな?」
「先生、どうしたの?」
「いや、日誌を持って行くのを忘れてしまったんだ。先生が忘れ物をしていてはいかんな」
そう言って頭をかきながら、先生は大きな口で笑います。
「先生。わたしも忘れちゃったのかな?」
「ん? 教科書を入れ忘れたのか?」
「ううん。絵の描き方を忘れちゃったのかも。どうやって絵を描いていたのか、わからなくなっちゃったの。画用紙を見ても、クレヨンを持っても、頭に何も浮かばないの。何も浮かばないの……」
あずきちゃんは、肩を落としてうつむいています。先生は、その様子を見て何やら考え事をしていました。そして、思いついたように手をポンと合わせ、あずきちゃんに声をかけます。
「あずき、ちょっとこっちへ来てごらん」
先生はそう言うと、あずきちゃんを手招きして歩き出します。あずきちゃんは戸惑いながらも、てくてくと先生のあとを追いました。
【折れた黄色のクレヨン2へ続く】
晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。
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